古書の森 逍遙[詳細]
古書を古読せず、雑書を雑読せず。
雑・書・撩・乱、近代日本の出版文化誌
サントリー学芸賞/角川財団学芸賞受賞の気鋭のノンフィクション作家が
古書店通いで出会った魅力的な雑書たち。
それら220冊の“古書の森”を通して、
明治・大正・昭和の出版文化とともに、
「写真」「伝書鳩」「村井弦斎」「国木田独歩」
「グラフ誌」「戦争とジャーナリズム」「食と健康」「明治と女性」など
作家が追い求めてきたテーマの軌跡を浮き彫りにする。
巻頭口絵より
■目次より |
▲ |
巻頭口絵(カラー) 雑書繚乱
戦争とグラフ誌、村井弦斎グラフィティ、パノラマグラフィック第1章 『団団珍聞』から村井弦斎『釣道楽』まで——明治10〜35(1877〜1902)年
古書展めぐり1 神保町の無料箱の収穫[2004]第2章 村井弦斎『酒道楽』から『日露戦争写真画報』まで——明治36〜37(1903〜1904)年
古書展めぐり2 南部古書会館の奇跡[2005]第3章 『戦時画報』から桜井忠温『肉弾』まで——明治38〜39(1905〜1906)年
古書展めぐり3 東京古書会館の古書合戦[2006]第4章 『近事画報』から『食養雑誌』まで——明治40〜45(1907〜1912)年
古書展めぐり4 二〇〇円均一で夢心地[2006]第5章 『楽天パック』から立川文夫『最新 欧米礼儀作法』まで——大正元〜9(1912〜1920)年
古書展めぐり5 本の神様のお導き![2007]第6章 木村小舟『日本国宝巡礼』から『警句の泉』まで——大正10〜15(1921〜1926)年
古書展めぐり6 逃がした魚を追って……[2007]古書展めぐり7 神田古本まつりでの眼福[2008]
第7章 『尋常小学 全科参考書』から『戦時女性』まで——昭和2〜19(1927〜1944)年
古書展めぐり8 一箱古本市で古本オーラ[2009]第8章 『旋風二十年』から『音のない記憶』まで——昭和20〜平成21(1945〜2009)年
古書展めぐり9 「みちくさ市」で[2009]あとがき
本文人名索引
■本文凡例
◎本書は著者のブログ「古書の森日記」(https://blog.livedoor.jp/hisako9618/)2004年9月25日から2009年11月12日までに紹介された約770冊の書籍・雑誌・新聞・冊子の中から、著者監修のもとに編集部が220冊を選び、編集の後、著者が加筆訂正を行った原稿で構成されている。
◎収録にあたっては、取り上げられた書籍を発行年順に並び替えた。巻頭から時代順に読み進めることで、明治・大正・昭和の時代性と出版文化の関連を読み取ることができる。
◎また書籍には001から220までのコード番号をふり、各書籍の紹介文の文末に、次の関連書籍を明示するリンク・コードをつけた。このリンク・コードをたどることで、著者が関心を持つテーマの軌跡に沿って、発行年順とは異なるルートで220冊を一巡することができる。
■関連図書(表示価格は税別) |
▲ |
■関連情報 |
▲ |
昨年11月に急逝した作家・黒岩比佐子さんの蔵書展が、愛知県犬山市の明治村で開催中です。昨年6月の東京古書会館、9月の小樽文学館に続く展示になります。
明治村は、広い敷地に明治期の歴史的建造物を集めた博物館。その中のひとつ、重要文化財に指定されている「三重県庁舎」が会場になっています。明治村は名古屋からバスで20分と近いので、ぜひ足をお運びくださいませ。
会期 2011年3月6日〜6月26日
会場 博物館明治村内 三重県庁舎1階特別展示室
*2011年3月20日付のスタッフブログ「明治村日記」もご覧ください。
●2010.12.15 USTREAM ピーマンTVに『古書の森 逍遥』編集者出演
USTREAM ピーマンTV「本の現場シリーズ 編集者が語る、この本のここが面白い! 」第3回は、『古書の森 逍遥』編集が語る』。編集の石原と葛生が、黒岩さんのこと『古書の森逍遥』の面白い読み方などを語りました。2010年12月15日に放送配信し、現在アーカイブでご覧いただけます。ピーマンTV アーカイブ
黒岩比佐子さんが11月17日に急逝されました。ご冥福をお祈りいたします。
USTREAM ピーマンTVにて「本の現場シリーズ 緊急追悼番組 黒岩比佐子さんとの日々——担当編集者3人が語る」が放送されます。
『明治のお嬢さま』(角川選書)、『古書の森 逍遙』(工作舎)、『パンとペン』(講談社)の各担当編集者が、黒岩比佐子さんとの仕事の日々を振り返ります。命の炎が消えるまで、ノンフィクション作家としての矜持を守りぬいた黒岩比佐子さんの365日。
11月20日(土)19:00〜 深川いっぷくにて、実況中継
ピーマンTV:https://p-man.tv
深川いっぷく:https://www.fukagawa-ippuku.jp/
江東区白河3-2-15 03-3641-3477
*現在アーカイブでご覧いただけます。ピーマンTV アーカイブ
●2010年9月4日(土)〜11月3日(水)小樽文学館
企画展<「日露戦争期の雑誌と書籍」(黒岩比佐子コレクションによる)>
6月東京古書会館に展示された黒岩さんの貴重な蔵書が小樽に巡回します。
・場所:小樽市立小樽文学館(小樽市色内1‐9‐5)
・開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)
・休館日:毎週月曜日、祝日の翌日(ただし土・日の場合は休まず振替となります)
・2010年9月4日(土)18:30〜亀井秀雄館長の講演「日露戦争とジャーナリズム」(無料)
・お問合せ先:小樽文学館 0134-32-2388
https://www4.ocn.ne.jp/~otarubun/bungakukan/yakataindex.html
●2010年9月19日(日) 雑司が谷・みちくさ市
「黒岩比佐子堂」出店
豊島区雑司が谷で開かれる、古本フリマ「みちくさ市」に、「黒岩比佐子堂」が出店します。黒岩さんの蔵書20冊に加え、黒岩比佐子サポーターズの面々が個性豊かな本を出品します。場所は、マップ「14 個人宅ガレージ」、お隣は書評家/ライターの岡崎武志堂です。当日はご病気の黒岩さんに代わり、サポーターズが店番に立ちます。『古書の森 逍遙』の黒岩さん直筆サイン本も限定発売。
◎ブックフェア スケジュール:
●2010年7月18日(日)〜9月中旬 ジュンク堂書店京都BAL店
<黒岩比佐子著『古書の森 逍遙』刊行記念フェア+sumus>
黒岩さんの著作、選書された明治の本・食の本の他、古書通の岡崎武志さん・林哲夫さんら6人のsumus同人の選書も加わり、200余点の大フェアを展開。sumus同人から黒岩さんについての文章と選書リストを掲載した小冊子を特別配布中!
・場所:5Fイベントスペース(京都市中京区河原町通三条下る二丁目山崎町 京都BALビル)
・開店時間:11:00〜20:00
・お問合せ先:ジュンク堂書店京都BAL店 075-253-6460
●神戸元町 海文堂書店
『編集者 国木田独歩の時代』や『歴史のかげにグルメあり』など黒岩さん著作と、村井弦斎『食道楽』などを集めたフェアを展開。
・場所:新刊台(神戸市中央区元町通3-5-10)
・開店時間:10:30〜19:00
・お問合せ先:海文堂書店 078-331-6501
●2010年7月3日(土)〜23日(金)ブックファースト渋谷文化村通り店
<『古書の森 逍遥』と明治・大正・昭和の私たち>
『明治のお嬢さま』(角川選書)に代表される、黒岩さんのテーマ「明治・大正期の女性・結婚観」の書籍を集めます。
・場所:地下1F 文芸書コーナー(渋谷区宇田川町23-3 渋谷第一勧銀共同ビル地下)
・開店時間:10:00〜23:00
・お問合せ先:ブックファースト渋谷文化村通り店 03-5459-3531
●2010年6月30日(水)〜7月11日(日) 清澄白河 深川いっぷく
<黒岩比佐子著『音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治』より—アルル国際フォトフェスティバルと井上孝治>
黒岩さん著作と、井上孝治さんの写真集、ポストカードを販売。また、アルル国際フォトフェスティバルのポスター等を展示。
・場所:「リコシェの本棚」に黒岩さん関連書
「調剤室ギャラリー」にて井上孝治関連(江東区白河3-2-15)
・開店時間:13:00〜20:00(水〜18:00)月火定休・祝日営業
・お問合せ先:深川いっぷく 03-3641-3477
●2010年6月22日(火)〜7月31日 紀伊國屋書店新宿本店
<黒岩比佐子著『古書の森逍遙』刊行記念 古書は楽し・古本三昧フェア>
黒岩さんの著作に加え、岡崎武志著『気まぐれ古書店紀行』、南陀楼綾繁著『一箱古本市の歩きかた』など、選りすぐりの古本エッセイを集めました。
・場所:5F文芸評論コーナー(新宿区新宿3-17-7)
・開店時間:10:00〜21:00
・お問合せ先:紀伊國屋書店新宿本店 03-3354-0131
●東京大学生協本郷書籍部
新刊一押しコーナーに『古書の森 逍遙』と『音のない記憶』の2トップ展開。黒岩さん直筆コメントつき。
・場所:レジ前新刊台(文京区本郷7-3-1)
・開店時間:10:00〜19:00 (土〜17:00) 日曜定休
・お問合せ先:東京大学生協本郷書籍部 03-3811-5481
●千駄木 往来堂書店
黒岩さん著作と、『明治のお嬢さま』つながりの『明治 大正 昭和 不良少女伝』『20世紀破天荒セレブ』から明治の本文脈を展開。
・場所:入って右側奥の棚下(文京区千駄木2-47-11)
・開店時間:10:00〜22:00
・お問合せ先:往来堂書店 03-5685-0807
●立川 オリオン書房ノルテ店
黒岩さん著作を中心に。
・場所:文芸書コーナー(立川市曙町2-42-1 パークアベニュー3F)
・開店時間:10:00〜21:00
・お問合せ先:オリオン書房ノルテ店 042-522-1231
●2010年6月20日(日)〜7月下旬 東京堂書店ふくろう店
<作家・黒岩比佐子がみるニッポン食道楽>
・場所:東京堂書店ふくろう店(千代田区神田神保町1‐1)
・開店時間:10:00〜20:00 (期間中休店日なし)
・お問合せ先:東京堂書店ふくろう店 03-3291-3101
https://www.tokyodoshoten.co.jp/
●2010年6月14日(月)〜7月4日 三省堂書店神保町本店
<作家・黒岩比佐子が読む明治ワンダーランド>
・場所:三省堂書店神保町本店(千代田区神田神保町1-1)
4階・上りエスカレーター前コーナー
・開店時間:10:00〜20:00 (期間中休店日なし)
・お問合せ先:三省堂書店神保町本店 03‐3233‐3312
https://www.books-sanseido.co.jp/shop/kanda.html
●2010年6月9日(水)〜終了 京都・古書善行堂
<黒岩比佐子著書全点フェア>
流通本を定価販売します。新刊『古書の森 逍遙』は6/16から先行発売。
・場所:古書善行堂(京都市左京区浄土寺西田町82-2)
・開店時間:12:00〜20:00 (定休日:火曜日)
・お問合せ先:古書善行堂 075-771-0061
https://www.hat.hi-ho.ne.jp/zenkoh/
◎展示スケジュール:
●2010年6月1日(火)〜6月30日(木)千代田区立図書館
<歌舞伎座グラフィックス——作家・黒岩比佐子の「古書の森」より>
・展示概要:明治期発行の木版役者絵入り『歌舞伎新報』、大正から昭和初期にかけ
ての歌舞伎座の筋書、戦後の復興を記念して出版された『歌舞伎座』など、歌舞伎座
をめぐるグラフィックイメージを集めました。
・場所:千代田区立図書館(千代田区九段南1-2-1千代田区役所)
9階「としょかんのこしょてん」展示スペース
https://www.library.chiyoda.tokyo.jp/guidance/rarebookonlibrary35.html
・開館時間:月〜金10:00〜22:00/土10:00〜19:00/日・祝10:00〜17:00
・休館日:6月27日(日)
・お問い合せ先:千代田区立図書館 03-5211-4289・4290
・展示詳細は神保町のポータルサイト「じんぼう」:
千代田図書館×神田古書店連盟『としょかんのこしょてん』
●2010年6月20日(日)〜6月26日(土)東京古書会館
<作家・黒岩比佐子が魅せられた
明治の愛しき雑書たち
——日露戦争・独歩・弦斎>
・展示概要:日露戦争当時の作家やジャーナリストたちは何を考え、どんな作品やメディアを創ってきたのか、戦争にどう対応したのか——。主に国木田独歩と村井弦斎に関連するものを中心に、約百年前に登場した「戦争」「女性」「食」をテーマにした雑誌や書籍を展示します。
・場所:東京古書会館(東京都千代田区神田小川町3-22) 2階展示室
https://www.kosho.ne.jp/honbumap/kaikan.html
・開館時間:10:00〜18:00
・後援:東京都古書籍商業協同組合
・会場受付では、黒岩比佐子氏の6月最新刊『古書の森 逍遙——明治・大正・昭和の愛しき雑書たち』と、既刊著書(著書は全てサイン本)及び関連書を取り揃えたミニ・ブックコーナーを設置いたします。
・スペシャル・トークセッション 黒岩比佐子+岡崎武志(古本ライター)
日時:2010年6月26日(土)14:00〜16:00場所:東京古書会館 7階会議室
料金:1000円
お申し込み先:黒岩比佐子サポーターズ 03-3533-7051(工作舎気付)
saturn@kousakusha.co.jp
詳細:
ゲストに朗読家・鈴木千秋さん
「スペシャル・トークセッション」に、ゲストの出演が決まりました。朗読家・鈴木千秋さんです。当日は岡崎武志さんと黒岩比佐子さん(予定)とのトークの合間に、国木田独歩や村井弦斎の本の一節を朗読いただきます。お楽しみに。
1980年代後半より舞台朗読の第一人者幸田弘子氏に師事。
2000年、「朗読グループ・幸風」を立ち上げ。以後毎年公演を主宰。
現在はフェリス女学院大学、早稲田大学オープンカレッジ、小平の公民館などで朗読の講師を務める。 これまで樋口一葉、夏目漱石、宮沢賢治、太宰治、宮部みゆきなどの作品の朗読のほか、「おくの細道」「源氏物語」など古典の朗読も行っている。
07年、JAL国際線の機内オーディオ「千年紀によせて〜源氏物語が誘う雅な音世界〜」でナレーションを担当。
08年軽井沢大賀ホール、09年かつしかシンフォニーヒルズの幸田弘子氏の舞台で「源氏物語〜葵〜」の現代文ナレーションを担当。
09年より老人ホームでの朗読を開始。
https://kouhuu-goyomi.jugem.jp/
●本の雑誌 2010年7月号
私が愛する古書・雑書たち—『古書の森 逍遙』と展示会=黒岩比佐子
2010年6月14日 読売新聞夕刊
東京古書会館と千代田区立図書館の展示情報が掲載されました。しかも黒岩さんの写真入りです。
2010年6月16日 東京新聞夕刊
「古書の楽しさ知って——ノンフィクション作家黒岩比佐子さん新刊イベント」と題して、大きめの紹介記事です。黒岩さんの談話も、
「明治期の雑誌はユーモアのセンスやデザインの感覚がすごく面白い。今ある雑誌の原型はすべて明治にある。電子書籍の話題で世間がにぎわうときに、百年前の古書に観客がどんな感想を持つのか楽しみです」。記事全文(pdf)はこちら:拡大してご覧ください。
2010年6月17日 朝日新聞夕刊
イベント紹介に掲載されました。
2010年6月22日 毎日新聞[東京版]朝刊
見出しは「日露戦争期の書籍展示——作家、黒岩比佐子さん所蔵」。国木田独歩が編集にかかわった「戦時画報」や「婦人画報」など具体的な展示作品名も紹介されています。「マイクロフィルムでは分からない100年前の本が持つ鮮やかな色遣いや紙の質感の迫力を楽しんでほしい」と話す黒岩さん談話も。
全文は毎日新聞サイトへ
*おかげさまで120名超のお客様にお越しいただきました。ありがとうございました。
2010.6.26 トークセッションの報告はこちらへ。
■書評 |
▲ |
●2010.12.17 週刊読書人「2010年の収穫」アンケート
評論家の権田萬治氏が「さきごろ五十二歳の若さで世を去った優れたノンフィクション作家でもあった著者のブログを編集・収録したもの。氏の著作の舞台裏がうかがえる。」と。
●三田評論 2010.10月号 黒岩さんによる「執筆ノート」
まさか、自分がここまで古書の世界にのめりこむなどとは、少し前には想像もしていなかった。古書は埃っぽくて汚いし、古書店にはひとクセありあそうな店主がいて、入るのが怖い——。漠然と抱いていたのはこうしたイメージだった。…(中略)
ある意味では、古書の専門家ではなく、素人だからこそ書けた本だと思う。本書で、こういう古書の見方や楽しみ方があるのか、と感じていただければ幸いだ。
●文藝 2010冬号 本多正一さん 書評
…作品の背後にあった古書に関するフィールドワーク実践の報告書でもあるが、しかつめらしい論述ではなく、思わぬ掘り出し物、失敗談、つぶやき、愚痴、日々の情動のさざなみが、独自の「古書の森」を成り立たせ、楽しい読み物にも仕上げられている。
方法論は違うが、人々が見過ごすようなものに注意、関心を払い続けた今和次郎の考現学、トマソンを発見した赤瀬川原平、建築探偵・藤森照信らの路上観察学にも通じる読後感を抱かされた。対象への真摯なまなざし、やさしさと愛情、たくまざるユーモアが共通するためであろう。
●2010.9.12 朝日新聞 穂村弘さん書評
昔の本から新しい「今」を切り開く
…雑誌の最新号をみると自分の遅れを意識するし、ちょっと古い号をみると逆にこちらの方が進んでいるように感じる。では、明治や大正の記事をみると、圧倒的に自分が進んでいるように思うかというと、そうはならないところが不思議だ。
例えば「近頃欧羅巴では、手の爪に写真を撮影することが発明され、それが米国までも伝はつて昨今非常に流行して居るそうです」って、一体どういう技術なんだろう。昔というよりも未来の出来事のようだ。(中略)
著者は大昔の雑誌を買いまくり読みまくることを通じて、独自の関心領域(伝書鳩、村井弦斎、お嬢さまなど)を見出している。さらに、それらをテーマにした本を書くことで、世界に新しい「今」を切り開いているのだ。
読者である私はそのプロセスを味わうことで、本当の「今」とは外からの情報として到来するのではなく、自分自身の裡に生まれることを教えられた。
全文は朝日新聞サイトへ >>>
●2010.9.18 図書新聞
…ブログ「古書の森日記」の2004年9月-2009年11月で紹介した書物から220冊選んで加筆・整理した。このブログの特色は熱心に古書展、古書フェアに足を運び、関心のある本を買い集めている集書日記であること、当然買いすぎて反省したり、高価であきらめたり、ということはあるものの、収集ぶりはマニアックだ。関心の幅が広くて、明治の画報類、伝書鳩関係、食物の関係、といろいろだが、表紙や口絵が切り取られてほとんどくずみたいな雑誌でも「読めるから」と買い、その後雑誌名や号数などを突き止めたりしている。…
●9/5 信濃毎日新聞、9/4 福島民報
良妻賢母を説く実用書「女重宝記」。国木田独歩が創刊した風刺漫画雑誌「上等ポンチ」。大正時代の健康マニュアル「強い身体を造る法」。書名だけでも面白い。読者の関心を引こうとさまざまな趣向を凝らした本は、歴史の教科書が伝えない“時代の空気”を映し出している。
●2010年10月号 東京人
こんなにも豊かで瑞々しい、驚きに満ちた、古書の森。
「雑書」から、こんなにも豊かな世界を掘り出し展開させる、著者の眼力と忍耐、そして古書愛に脱帽!
●2010.8.23 読売新聞夕刊「新刊立ち読み」編集者発
…一冊の本の中にだってリンクがあっていいじゃないかと、出てくる本ごとに次の関連本を明示するリンク・コードをつけたのです。これをたどれば「明治の女性」「食と健康」など黒岩さんが追い求めてきたテーマが次々に立ち現れる——本書にはそんな秘密の小径が巡らされています。
●2010.8.6号 週刊ポスト 与那原恵さん書評
古書の積み重なる時間に合わせていく「美しさ」
古書の世界とは、まさに豊穣な「森」だ。年輪を刻む多様な樹木が茂り、足元には草花が芽吹き、さまざまな生き物がいる。そのひとつひとつに目をとめ、積み重なる時間の空気をたっぷり吸い、息を合わせてゆく。本書の「美しさ」は、そんな黒岩さんの姿だ。
出会った古書を紹介しながら、人物や時代背景を丹念に、わかりやすく記す手腕は見事で、読みごたえがある。広告ページや本にはさまっていた栞にも感応し、想像をふくらませている。
本は、遠い時代とひとを親しく想わせ、今日を生きる励ましも与える。黒岩さんは今、病いと戦いながら、つぎの作品に向かわれていると伺った。どうか無理をせずにと願いつつ、本の森に誕生するあらたな命を心待ちにしている。
●2010.7.26 紀伊國屋書店 書評空間 大竹昭子さん書評
これまで男性専科だった古書界で話題を集めている女性がいる。『古書の森 逍遙』という本を出したばかりの黒岩比佐子である。ノンフィクション作家の彼女は、執筆の途上で必要に迫られ古書を手にとるうちに、おもしろさに魅せられてはまっていったという。
(中略)
資料で明らかになったことを後づけるために、関係者への取材も怠らない。こうして古書と現実を行き来しながら、歴史のなかに埋もれてしまった事実を掘り出していく姿には、知的好奇心に裏付けされた瑞々しさが満ちていて、知ることの楽しさを読者に教えてくれる。全文は紀伊國屋書店 書評空間サイトへ
●2010.7.23 神戸新聞「本屋の日記」 海文堂書店 北村知之さん紹介
6月某日
黒岩比佐子の新刊『古書の森 逍遙』を読む。読書とは1冊の本で完結するのではなく、さまざまな本が有機的に絡みあう集合体としての本を、自分の中に編み続けていくことだと教えてくれる。さらに工作舎らしい巧みな編集で、本がただの容れ物ではなく、ひとつの装置として機能するように造られている。
●2010.7.18 しんぶん赤旗 岡崎武志さん紹介
明治の裏面史を古い雑誌から発掘した本です。『団団珍聞(まるまるちんぶん)』や『釣道楽』『婦人世界』など、著者は古書展に通い、身銭を切って集めた明治以来の雑誌を紹介しています。現物の強み、紙の本ならではの力を感じさせる仕事です。ブログをまとめた本ですが、本の発行順に並べ直していることで、知られざるジャーナリズム史にもなっています。
●2010.7.11 徳島新聞 岡崎武志さん書評
現物手にひもとく出版史
今年、キンドル、iPad(アイパッド)など電子書籍の端末が話題になると、「紙の本は滅びる」などと業界は動揺した。情けない。紙の本が無くなるわけがないじゃないか。
それは、この黒岩比佐子の古書遍歴を綴った日録(ブログ)を読めば明らかだ。(中略)
「日本のグラフ誌にとって、日露戦争前後の明治37(1904)年から40年ころが、撮影技術、印刷技術、デザインの面などで大きく発展した時期だったことがわかる」という記述も出版史の丸写しではない。すべて身銭を切って現物を手に入れた上での実感なのだ。
キンドルやアイパッドをいくらありがたがって指紋を付けても、こんな実感は到底出てこない。すべて生きて働く古書発掘の成果だ。
●2010.7.6 毎日新聞夕刊「読書日和」 荻原魚雷さん書評
週末、神田の東京古書会館にさっそうと現れ、人込みをかきわけ、さわると手が真っ黒になるような古本を次々とさらっていく。1冊数百円の雑本、雑誌に一喜一憂し、たまに希少本を衝動買いし、悔やみはしないがすこし落ち込む。
●2010.7.3 日刊ゲンダイ
西南戦争の年に発行された新聞「団団珍聞」、村井弦斎「釣道楽」(明治35年)、大正6年刊「新小説 臨時増刊号」(漱石追悼号)、真珠湾攻撃の5日前に出た「写真週報」(情報局発行)など収録の220冊からは、近代日本の文化、世相が浮き彫りに。巻頭口絵写真は、35回も重ね刷りしたという村井弦斎「HANA」の木版口絵を忠実に再現したもので必見。
●2010.6.19付 林哲夫さんブログ「daily-sumus」
黒岩ブログで扱われている古書(新刊含む)を明治初十年の『団団珍聞』から平成二十一年の『音のない記憶』まで220項目に精選して、年代順に並べ替え、しかも各項の文末には関連書の参照番号を振って編集し直している。順番に読んで行かなくても興味をつなげて飛石式に味読できる、つまみ食いにはもってこい。簡潔なそれぞれの項目の文章が、あちらでもこちらでも有機的にからまってくる様子(それは黒岩さんの興味の在りどころを示す)をよりいっそう効果的に感じ取ってもらいたいという編集者魂、このリンクを仕上げるのに一ヶ月かけたというから半端じゃない。…
編集者の深い愛があってこの本が生まれた。古書の森ブログは黒岩さんの著作群と表裏一体。愛されるに足る仕事を黒岩さんがずっと手を抜かずにやってきた証拠であろう。ブログをやっている者なら誰だってこういう本をつくってもらいたいだろうなあ(ヨダレ)。全文および写真はdaily-sumusサイトへ