月島物語ふたたび[詳細]
月島をめぐる傑作エッセイ
1988年、ニューヨーク帰りの批評家が、
東京湾に浮かぶ月島で、長屋暮らしを始めた。
植木が繁茂する路地、もんじゃ焼の匂い漂う商店街、
鍵もチャイムもいらない四軒長屋……。
昔ながらの下町の面影を残すこの街だが、
実は日本の近代化とともに作られた人工都市だった。
モダニズムがノスタルジアに包まれた街——
批評家はそのベールを一枚ずつはがし、月島の全体像を浮かび上がらせていく。
日本近代化論、文学論、都市論を縦横に駆け巡る
傑作エッセイの待望の復刊。
第一回斎藤緑雨賞を受賞した単行本版、
文化人類学者・川田順造氏との対談を含む文庫版補遺に加えて、
書き下ろしエッセイ、建築史家・陣内秀信氏との対談、
各時代の月島風景などを収録した決定版。
■目次より |
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1988—1992 |
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■編集者より |
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四方田氏は1988-94年まで月島の長屋で生活し、以後、月島を離れています。今回、再び月島を訪れて各方面の取材を重ね、「陸地で生じることのいっさいを、水という隔たりを通して、島の側から眺め思考すること」の必要性を説いていきます。
本書はそうした趣旨に沿って、常に「水」を意識させるような造本設計を行ないました。本文には隅田川を思わせる濃紺の刷り色を採用し、小口にはペ−ジを開いているときは川波を想起させるべく縞模様が現われるようにしました(本表紙もこれらの設計とイメ−ジを合わせています)。ぜひ実物を手にとって、この造本の妙味を味わいください。
■関連図書(表示価格は税別) |
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■関連情報 |
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●四方田氏の詩集『眼の破裂』と石丸澄子さんの「月島招布」、本webサイトで特別販売
紀伊國屋書店新宿本店での「じんぶんや」で大好評だった四方田氏の詩集『眼の破裂』と、石丸澄子さんの「月島招布」を特別販売します。
『眼の破裂』税込1500円 詳細はこちら >>> 完売しました |
「月島招布」税込2000円 詳細はこちら >>> |
●2007.4.20〜6.17 紀伊國屋書店新宿本店「じんぶんや」四方田犬彦氏選書
4/20からはじまった紀伊國屋書店新宿本店5Fの常設フェア「じんぶんや第31講」は、四方田犬彦氏の選書。題して「読むことのアニマのための50冊」。セリーヌの『なしくずしの死』から秋山祐徳太子の『ブリキ男』、パレスチナから舞踏まで、広範な知に触れてください。
石丸澄子さんお手製の「月島物語ふたたび」招布(まねぎ)がはためくフェアの様子はこちら。 >>>
また、四方田氏の詩集『眼の破裂』、同人誌『三蔵2』を特別販売します。『眼の破裂』は、本名・四方田剛己名での高校時代の詩作をまとめたもの。『ハイスクール1968』に綴った詩作が収録されています。『三蔵2』は詩人の小池昌代氏、歌人の石井辰彦氏とともに主宰した詩の同人誌。2002年の創刊号から2006年の6号(終刊号)まで、そろいます。
ふだんは市場で流通しない本ですので、この機会にどうぞご覧ください。(6/17終了)
紀伊國屋書店新宿本店 5Fカウンター前
じんぶんや第31講「読むことのアニマのための50冊」 四方田犬彦=選
紀伊國屋Book web に、詳細・ブックリストあり >>>
●2007.2.11 刊行記念 四方田犬彦さん講演会&サイン会
『月島物語ふたたび』の刊行を記念して、東京・神保町の東京堂書店本店にて、 著者・四方田犬彦さん講演会&サイン会を開催。
2007年2月11日(日) 15:00〜17:00(会場14:45)
「月島の映像的記憶・・・月島物語ふたたび」
会場:東京堂書店本店 6階
■書評 |
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●2008.1/2月号 みすず 読者アンケートに 三中信宏氏(進化生物学)
…月島で時代の流れとともに失われゆくものと、なお偏在的にこの地に生き残るものがある。著者は確かに「月島のモノグラフ」を記したのだ。随所にあしらわれたモノクロ写真は実に寡黙にして饒舌だ。当事者と第三者の視線が混じり合う、危うい感触が味わえる。
●散歩の達人で四方田犬彦氏、月島を語る
散歩の達人 2007.12月号 築地・月島・佃島
…月島の人はよく喋る。でも、はっきり理解しておくべきなのは、月島にはいろんな人がいて、いろんな事情をもっているということ。だから、あるところから個人の中へは踏み込まない、というエチケットがあります。それはもしかして、江戸っ子の継承なのかもしれない。江戸の町には、脱藩者に農民、といろいろなところから人間が流入してきた。だから、長屋にいてもあるところまで親しく、でも、そこから先は足を踏み込んじゃいけないという見極めがある。
●「東アジアへの視点」にて書評
ブックレビュー:街の記憶—帰郷に際して—
…
辺りの長屋は高層ビルに取って代わられ…他方で、賑わいの薄れた印象の商店街の中で、もんじゃ焼きの店の異常な増殖という下町ツーリズムの現象も同時発生していた。月島にもたらされた変容を著者は、「『まちづくり』とはつねに両刃の剣である。それは一見、土地の特殊性に基づいているように見えて、しばしば外部からの政治と消費の絶好の口実である場合が多い」
●2007.4.15 朝日新聞 書評欄「話題の本箱」に
懐旧の東京 景色が変わって、人も変わって
「下町」っぽいといわれるが実は、 月島は明治になって埋め立てられてできた新しい町で、隣の佃島とは成り立ちが違う。「もんじゃ焼き」店進出など街の移り変わりにも、感傷的な見方はしない。
●東京人 2007.5月号 紹介
月島から見た近代日本の姿。傑作エッセイの増補復刊。
ダイナミックに月島の姿を描き出す
月島イコールもんじゃ焼き、そして下町の代名詞、と思われがち。だがこの町は、富国強兵のもとにつくられた、わずか百年ほどの歴史しか持たない人工都市だ。小誌連載でもお馴染み、月島の住人として暮した著者が、独自の視点から都市論や文学論、映画論などを縦横に繰りつつ、ダイナミックに月島の姿を描き出す。…
●2007.4月号 インビテーション(ぴあ) 岡崎武志氏書評
幾重にも重なった幸福がふたたび甦らせた一冊
…月島は東京都中央区、隅田川を隔てて、築地と対峙する人工島なのだが、東京の下町の面影を残すエリア(著者はそれを否定)として、あるいは「もんじゃ焼き」の町として人気が高い町。そこにニューヨーク帰りの著者が、路地の奥にある古い四軒長屋の一軒に住みついた。世界各地を旅し、文学、都市、映画、マンガ、音楽、美術と幅広い領域に関心を持つ著者が、その知見を存分に生かし、この町の歴史を探り、町を隅々まで歩いて書いた本である。人気俳優が「下町っていいですねえ」式の寝ぼけたエッセイを書くのとはわけが違う。これは月島のために幸福だった。…
●2007.2.25 世界日報 書評
月島の過去・現在・未来
近年のウォーターフロント開発によって、月島をとりまく環境は大きく変貌し、著者が住んでいた頃の月島の風景も変わった。読者がそこに一種の喪失感を感じている間にも、著者はすでに「路地という視座」から「島という視座」の転換の必要性を提唱し、未来を見据えている。月島の定点観測は、まだまだ終わりそうもない。
●2007.2.16
三中信宏氏(進化発生学)書評
月島に「下町」を投影する心象風景
…東京にいた頃は,この元祖ウォーターフロントに足を運んだことは一度もなかったので,なんだか新鮮.場所的には海辺だが,コミュニティー的には「下町」 -- とつい言いそうになるのだが,読み進むに連れて現代社会で受容されがちな「下町」観がしだいに揺さぶられていくのが体感できる.月島は干拓によって新しく作られた街並であって,けっして歴史のある場所ではない.では,そのようないわば新参者の町に伝統的?な「下町」を投影したくなる今の日本人の「心象風景」とは何なのだろうか.実際,著者はこれまでの文学や映画,そして流行を挙げながらこの点を詳しく論じている.
●2007.2.5 公明新聞
変化を常とする都市を考えさせる増補改訂版
バージョンアップは底本の豊かな魅力ゆえともいえるが、それとともに、年月を経ての追跡的記述となった本書は、路地、長屋、もんじゃ焼きなどで「下町」という記号を付された「月島という空間」を通して、たえず変わっていく都市を考えさせるものにもなっている。
●東京生活 2007 March No.21「豊洲・月島・佃完全読本」
「あの月島が舞台の本」として写真入りで紹介されました。