「デレク・ベイリーを聴く会」vol.05報告
満員のサウンドカフェ・ズミの店内。アルバムごとに、オーナーの泉秀樹氏から詳細な解説が。
折しも隅田川の花火大会と同時刻にスタートした「デレク・ベイリーを聴く会」vol.05。インプロヴィゼーションの一大花火大会のほうを選択して、足をお運びいただいた皆様、ほんとうにありがとうございました。おかげさまで今回も満席でした。vol.01の様子|vol.02の様子|vol.03の様子|vol.04の様子
特別ゲストは批評家の平井玄さん。『路上のマテリアリズム』(社会評論社、1986)、『千のムジカ』(青土社、2008)、『彗星的思考』(平凡社、2013)などで、黒人音楽とテクノロジーが開いた20世紀という濃い「音楽の世紀」を俎上に載せてこられました。
今回は1970年にレコーディングされたアルバムの中から、ポール・ラザフォード(トロンボーン)、バリー・ガイ(ベース)との三人組での演奏Iskra 1903 (Incus 3/4)、ドイツ勢に混じっての集団即興演奏のGlobe Unity Orchestra Globe Unity 67 & 70 (Atavistic UMS/ALP 223CD)、トニー・オクスリーのグループでの演奏が収録された貴重盤Die Jazz-Werkstatt '70 (Norddeutscher Rundfun-0654 094)などを聴いていきました。特にGlobe Unity Orchestraの70年の演奏については、映像を交えてご紹介しました。dzumi.list5
「60年代の<沸騰するジャズ>に親しみ、あるストーリーで音を聴くことに慣らされた自分には、当初、デレク・ベイリーの演奏をどのように受け止めればよいのか、わからなかった」と語る平井さん。「それだけ時代に呪縛されていたのかもしれない」、と。しかし、シリアス/エンターテインメントの境界を底からぶち破るベイリーの演奏には、しだいに強く共感するようになっていったとのこと。
愛聴するきっかけになったのは、エヴァン・パーカー(サックス)、ハン・ベニンク(パーカッション)とのThe Topography of the Lungs (Incus 1)。「個人的にはストーリーをはねのけるのが大変だったが、それはベイリーたちもそうだったのではないか。Iskra1903などを聴くと、ストーリーをはねのけるだけの力がある」とのことでした。ストーリーというのは結局、爆発と崩壊の後にユートピアが来るという「終末論」だったのではないか。その呪縛から自由だったベイリーは、たった一人で即興の潜在力を引き受けた、といいます。
めくるめく集団即興演奏のGlobe Unity Orchestraに対しては、「これじゃあ『ウォーリーをさがせ!』みたいに、どこがベイリーの演奏なのか、探してしまうよね(笑)。でも、この頃のフリージャズが最高に好きだということが、今日改めて分かった。まさに至福の時間でしたね」と、締めくくっていただきました。
さて、次回vol.06では、特別ゲストに批評家/音楽家の大谷能生さんをお迎えします。満席の場合はお立ち見の可能性がありますので、できるだけ事前のご予約をお願いします。Vol.03の時にお配りしたスタンプカードをお持ちで、継続してご参加いただいている皆様、引き続きよろしくお願い申し上げます。
特別ゲストの批評家・平井玄氏。『デレク・ベイリー:インプロヴィゼーションの物語』の著者、ベン・ワトソンには自分と近いものを感じると語る。
今回は特別に、デレク・ベイリーの最初期の演奏シーンが登場するGlobe Unity Orchestraの貴重なライヴ映像(Globe Unity 70収録時のもの)を鑑賞
1978年・1979年のデレク・ベイリーのインタビュー(インタビュアー:木幡和枝氏)が掲載された『遊』1008号を掲げる泉秀樹氏(同インタビューは『デレク・ベイリー:インプロヴィゼーションの物語』にも再録)。この特集号には、灰野敬二氏のインタビューも収録。
会の後の打ち上げでは、『デレク・ベイリー:インプロヴィゼーションの物語』の翻訳者・木幡和枝氏(左端)、モデレーターの一人、著述家・編集者・ミュージシャンの山崎春美氏(中央)も加わり、盛り上がる。
山崎春美氏は、8月24日(日)18:00から、サウンドカフェ・ズミにて、四方田犬彦氏とトークイベント「モロッコ中毒者の告白〜Vol.1ボウルズ、バロウズ、ウェストン」を開催予定。先着限定20名様とのこと。
入場料:2000円(1ドリンクつき)
ご予約:event.dzumi[a]jcom.home.ne.jp([a]を@に変えてください)
件名:モロッコ中毒者の告白Vol.1、参加者氏名、参加人数、電話番号を記載のうえお申し込みください。
「デレク・ベイリーを聴く会 」vol.06 :70年代の音源[4]
大谷能生(批評家/音楽家)
2014年8月30日(土)18:00〜
会場:Sound Cafe dzumi サウンドカフェ・ズミ(吉祥寺)
JR吉祥寺駅南口より徒歩5分
武蔵野市御殿山1-2-3 キヨノビル7F tel:0422-72-7822
入場料:1500円(ドリンク付)
先着20名 要事前予約:event.dzumi[a]jcom.home.ne.jp([a]を@に変えてください)
件名「デレク・ベイリー」、氏名、人数、お電話番号をご連絡ください。
*満席の場合はお立ち見となりますので、できるだけご予約をお願いします。