工作舎ロゴ 『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』書評


ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統

『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』、
9/11号 図書新聞 谷川渥氏書評

野家啓一氏の読売新聞書評に続き、谷川渥氏が図書新聞にて『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』を書評してくださいました。
(中略)

正真正銘の魔術師、ジョルダーノ・ブルーノ
  イエイツ女史の経歴の特異性も示唆

フランセス・イエイツといえば、すでに『記憶術』、『世界劇場』、『薔薇十字の覚醒』、『魔術的ルネサンス』などの邦訳を通して、その<魔術>を中核に据えたルネサンス研究によって比類ない歴史家としての相貌をわが国にも刻印しているが、本書はこれらの著作以前に書かれ、これらの研究の基点とも豊饒な母胎ともなった驚くべき大著である。

初版刊行は1964年。女史65歳の折である。ということは、今挙げた著作群は、すべて60代後半から80くらいまでの間に書かれたわけで、それだけでも女史の特異性を示唆しているといわなければならないが、いずれにせよそうした息の長さ、持続力、衰えぬ力強さは、わが国ではまず例を見ないものだ。

本書は、ジョルダーノ・ブルーノをヘルメティズムの伝統の中に置くことを目的とする。ブルーノといえば、コペルニクスの地動説を否認するよりは死を選んだ科学的確信の英雄、近代科学の殉教者であり、中世的アリストテレス主義の束縛を破って近代世界の到来を告知した先駆者である、といった広く流布したイメージがある。本書は、そうした通俗的なブルーノ像を破壊し、彼が「エジプト」とヘルメティズム的理想に心を奪われていた正真正銘の魔術師であることを、おびただしい資料の読解によって明らかにしようとする。 図書新聞サイトへ >>>







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