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アルチンボルドを読み解く『綺想の帝国』


『綺想の帝国』  『綺想の帝国』表4
『綺想の帝国』表1(左)と表4(右)


本日2017年6月20日より、上野・国立西洋美術館にてアルチンボルド展が開催します(9月24日まで)。果物や野菜で構成した肖像画で知られる16世紀の画家アルチンボルド。日本で初めて本格的な展覧会となり、注目を集めています。

トマス・ダコスタ・カウフマン著『綺想の帝国:ルドルフ2世をめぐる美術と科学』は、アルチンボルドの作品を読み解く数少ない本の一冊です。
アルチンボルドだけではなく、16世紀、ハプスブルク家の宮廷に花咲いた新科学と芸術の融合を示し、マニエリスムの名のもとに見過ごされてきたルネサンスの魔術的想像力の真意を解き明かす画期的な論考。

特に後半「第4章 自然の変容 アルチンボルドの宮廷的寓意」以降はアルチンボルド中心に論が展開し、展覧会出品作の目玉である連作『四季』(春・夏・秋・冬)と対をなす『四元素』(空気・火・土・水)の図像学的解釈が圧巻です。その一部を引用しましょう。


アルチンボルドの絵に政治的な意味がひそんでいることにひとたび気づくと、そのほかの多くの細部までが特別な意味を持つものとしてたちあらわれてくる。そのため、あるレヴェルでは四大元素に言及していると解釈できるような絵の要素が、別のレヴェルではハプスブルク家に対する引喩となる。…「空気」のトルソの一部をなす孔雀と鷲は、…特にハプスブルク家のシンボルであり、ハプスブルク家の支配のもとにある「空気」という元素をあらわしているのだ。実際、この「空気」という元素はとりわけ戦争に関連する引喩をなすのであって、たとえば皇帝のくちばし(rostro)はまた戦争の印(Cassidis)でもあるのだ。(第4章 自然の変容「アルチンボルドと皇帝イメージ」より)

※目次はこちら。

『綺想の帝国』表紙(表1、表4とも)にもアルチンボルドの『四季』と『四元素』があしらわれています。
本書は西洋美術館ショップで販売いただきますので、この機会にぜひお手にとってご覧ください。

『綺想の帝国』表1・表4のアルチンボルド作品
『綺想の帝国』表1・表4のアルチンボルド作品

また、来年2018年1月にBunkamuraザ・ミュージアムで開催される「ルドルフ2世の驚異の世界展」では、アルチンボルドの《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》が展示されます。『綺想の帝国』前半の主役ホフナーゲルの絵画も出品されるようです。こちらも楽しみです。




※2017.6.27追記
『綺想の帝国』の著者トマス・ダコスタ・カウフマン氏が来日し、アルチンボルド展で講演します。

「ジュゼッペ・アルチンボルド――自然の変容」※タイトル変更/同時通訳付き
日時:2017年8月4日(金)14:00〜15:30
会場:国立西洋美術館講堂(地下2階)
定員:先着130名(聴講無料。ただし聴講券と本展の観覧券(半券可)要)
参加方法:当日12:00より、館内インフォメーションにて、本展の観覧券をお持ちの方一人につき一枚聴講券を配付。
主催:国立西洋美術館、「糸・布・衣の循環史研究会」、Global History Collaborative
アルチンボルド展 講演会





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