ルドルフ2世の驚異の世界展と『綺想の帝国』
ルドルフ2世の驚異の世界展
渋谷・Bunkamura ザ・ミュージアムにて、ルドルフ2世の驚異の世界展が開催中です(2018年1月6日〜3月11日)。
プラハに宮廷を構え、神聖ローマ帝国皇帝として君臨したハプスブルク家のルドルフ2世(1552〜1612)は、稀代の収集家として、また芸術の庇護者として知られています。
16世紀末から17世紀初頭、彼の宮廷には世界各地から優れた人物たちが集結し、芸術作品、あるいは科学機器などのあらゆる優れた創作物、更には新たに発見された珍奇な自然物などが集められ、文字通り「驚異の部屋」とでも呼ぶべき膨大なコレクションが形成され、当時のヨーロッパの芸術文化の一大拠点ともなりました。
本展ではジュゼッペ・アルチンボルドを始め、ルドルフ2世が愛好した芸術家たちの作品を中心に、占星術や錬金術にも強い関心を示した皇帝の、時に魔術的な魅力に満ちた芸術と科学の世界をご紹介します。(展覧会紹介文より)
展示の目玉は、ポスターのメインビジュアルになっているアルチンボルドの《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》。昨年の国立西洋美術館のアルチンボルド展に続き、主要作品を目の当たりにでき、ますますファンが増えることでしょう。
アルチンボルドの絵の真意を深く知るには、トマス・ダコスタ・カウフマン著『綺想の帝国:ルドルフ2世をめぐる美術と科学』がおすすめです。
このように、アルチンボルドによるルドルフ2世の肖像は皇帝の図像学の表現であふれているのだ。ルドルフがどうしてこの作品の到着を待ちわび、またそれを手にしたときあれほど喜んだのかもこれで簡単に理解できる。… (「第4章 自然の変容」より)
『綺想の帝国』表1(左)と表4(右)
同展のもう一つの目玉、自然の博物を主題とした細密画を得意とするヨーリス・フーフナーヘルについても、『綺想の帝国』で読み解きます。本書ではホフナーゲルと表記され、表紙もホフナーゲルの写本装飾=ボクスカイの字体見本帳からの挿絵で飾られています。表1の桜桃の茎が紙を突き抜け、表4に現れているのがわかります。だまし絵の手法です。ホフナーゲルのだまし絵をフランドルの写本からの影響を記しつつ、明確な違いをあぶり出します。それは宗教からの独立、静物画の誕生、科学の萌芽でした。
従来(今でも)、ルドルフ2世のコレクションやアルチンボルドの作品は、マニエリスムの「珍奇」というイメージでくくられていましたが、『綺想の帝国:ルドルフ2世をめぐる美術と科学』はそのイメージを覆した画期的な書です。ミュージアムショップで販売中ですので、ぜひお読みください。
また、ルドルフに仕えた天文学者ティコ・ブラーエ、ケプラーの存在も重要です。ケプラーの『宇宙の和声』(邦訳名、『宇宙の調和』)、『新星』(邦訳名『宇宙の神秘』『宇宙の調和』『新天文学』のケプラー三部作も、ショップで販売いただきます。