●本の散歩 04

古本酒場

古本酒場というものがあります。ブックカフェはここ10年で浸透し、地方でもユニークな店作りがなされています。しかし、酒場というと他を知りません。岡崎武志さんの新著『気まぐれ古書店紀行』にも登場する店です。店の中に古本棚があり、お客はそこから気になる本を抜き出し、カウンター席でじっくり吟味して買うこともできます。もちろん、純然たる飲み屋としても満足できます。

注目すべきは「文人料理」です。若い店主さんが、料理好きの文士たちが随筆等に書いて残したレシピや小説にでてきた食べ物の記述を読み、想像し、形にし、皿にのせて出す。これが美味い。きれいな写真ばかりの料理本では、盛り付けまで同じになりがちで文章から想像する楽しみがありません。

今度、奥さんから「あなた、今晩のおかずはなににしましょう？」と訊かれたら、「うむ。この文庫本122ページにある鮒飯を所望す」なんて言ってみては？