●本の散歩 11
大股びらき
欲にはきりがありませんね。
石油ストーブに給油するポンプがペコペコ押す手動だったものを、ああ、いつか電池式のポンプに換えたい!というささやかな望みも叶ってしまえば、次の欲がでてしまいます。新しいインクが買いたい。お鮨も一度は電話で注文してみたい。布団の打ち直しをしてもらいたい。DVDで落語を視て聴きたい。犬が飼いたい…。古本以外の私の物欲はそんなところで止まってしまいますが。
古書展での初日開場前、わらわらと熟年男性が集まります(まだ女性客はわずか)。たいへん元気です。開場されると我先に飛び込みます。この瞬間のために日頃、訓練を積んでおられるのではないでしょうか。
街の古本屋の棚を眺めるときと違い、時間勝負!ということもあります。気になる本はすぐに抱えないと、会場をぐるりひと回りした後では他の誰かに買われていることも。そして、そういった本ほど、買えなかったことを後悔し、後々までおぼえているようです。
鍵のかかったガラスケースの中の稀こう本を求めるわけでなく、自身の懐中を気にしつつ、興味・知識・勘で本をみつけ、古書展自体を愉しむ。元気なわけです。
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