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地球外生命論争1750-1900[詳細]
The Extraterrestrial Life Debate 1750-1900

目次著者紹介編集者より関連図書書評


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──『ニューサイエンティスト』

「地球は生命を宿す唯一の星なのか?」 恒星天文学の夜明けとともに、
科学者、哲学者、宗教家、文学者は喧々囂々の論戦を開始した。
謹厳な批判哲学で知られるカントから天文学者ハーシェル、詩人のジャン・パウル、
数学者ガウス、理神論のトム・ペイン、進化論のダーウィン、
火星狂いのロウエルまで、
地球外生命に託してそれぞれのコスモロジー(世界観)を
戦わせた熱き論争の全容。




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まえがき  立ち読み(PDF)text

I

序論 1750年以前
第1章 世界の複数性をめぐる1750年以前の論争  立ち読み(PDF)

第1部 1750年から1800年まで

第2章 天文学者と地球外生命
1 ライト、カント、ランベルト
2 ウィリアム・ハーシェル卿
3 ハーシェルと同時代の大陸の科学者
第3章 地球外生命と啓蒙運動
1 イギリスにおける世界の複数性の観念
2 大西洋を渡った多世界論
3 多世界論とフランスの啓蒙運動
4 ヨーロッパの他の地域における地球外生命擁護論

II

第2部 1800年から1860年まで

第4章 1800年以後激化した、世界の複数性に関する論争
1 トマス・ペインの理神論からトマス・チャーマーズの福音主義まで
2 「全世界がチャーマーズ博士のすばらしい天文講話を知っている」
3 アリグザンダー・マクスウェルの唯一世界論とトマス・ディックの数多世界論
4 月の住民を救うこと
第5章 ヒューエル以前の数十年
1 イギリスにおける多世界論
2 地球外生命とアメリカ人
3 大陸の考え方
第6章 ウィリアム・ヒューエル──疑問に付される多世界論
1 多世界論者の時代のヒューエル
2 ヒューエルの対話篇「天文学と宗教」
3 「他の天体のすべての理性的居住者の存在を論駁する」ヒューエル
第7章 ヒューエル論争──弁護される多世界論
1 デイヴィッド・ブルースタ
2 ベイドン・パウエル師の「決定権を握ろうとする」試み
3-6 天文学者と数学者、地質学者、宗教者たちの反応

III

第3部 1860年から1900年まで

第8章 古くからの問題に対する新しい研究方法
1 1860年代以降の発展、特に「新しい天文学」
2 リチャード・プロクター
3 カミーユ・フラマリオンは、「フランスのプロクター」か
4 月の生命をめぐる絶え間ない探究と驚くべき副次的結果
5 信号問題──月または火星にメッセージを送る試み
6 隕石のメッセージ──「世界から世界へ/種子はぐるぐる運ばれる」か
第9章 宗教的論議と科学的論議
1-4 フランス、ドイツ、イギリス、アメリカにおける宗教的著作
5 科学的著作──「プロクター的多世界論」の流行
第10章 戦いの惑星をめぐる争い
1 運河論争の開始──ジョヴァンニ・スキアパレッリの登場
2 スキアパレッリの「奇妙な図」とグリーンとモーンダーの反応
3 スキアパレッリは、火星を覆った「異様な多角形化と二重化」を支持した
4 1894年の運河論争──パーシヴァル・ロウエルの登場
第11章 結論のでていない論争に関する幾つかの結論
1 1917年以前の地球外生命論争の範囲と特徴
2 多くの多世界論における反証不可能性、柔軟性、そして説明力の豊かさ

付録:1917年以前に出版された、世界の複数性の問題に関する著作目録
雑誌新聞索引
事項索引
人名著作索引
訳者あとがき



■著者紹介:マイケル・J・クロウ Michael J. Crowe

1958年、ノートルダム大学にて博士号修得(人文学および科学)。1965年、ウィスコンシン大学にてPh. D修得(科学史)。現在、ノートルダム大学科学哲学教授。主な著書は本書のほかに A History of Vector Analysis: The Evolution of the Idea of a Vectorial System (Notre Dame, Indiana: University of Notre Dame Press, 1967), Theories of the World from Ptolemy to Copernicus (New York: Dover, 1990), Modern Theories of the Universe from Herschel to Hubble (New York: Dover, 1994)など。また編者としてジョン・ハーシェルの論文・手紙をまとめ、刊行している。




■編集者より

 「地球以外の星にも生命はいるのか」をめぐって、科学者、哲学者、文学者、宗教家が入り乱れて接近戦をくりひろげた熱き論争の集大成です。神を自然界から追放することをもくろんだC・ダーウィンが他世界の生命を支持するかと思えば、同時期に独立に進化論を唱えたA・R・ウォレスが反対にまわるといった具合で、必ずしも新興の科学的勢力が一致団結していたわけではありませんし、地上の自然観、審美的センス、宗教的信条の如何によって、敵味方を判別できないところが論争をますます複雑豊穣にして、興味はつきません。火星の運河に熱中したC・フラマリオンやP・ロウエルがフランス・アメリカ両国の天文学の振興に大いに貢献したことなど、まさしく「科学はあざなえる縄のごとく」進展してきたのだということが如実にわかります。

 科学はひたすら真理を追究するものと、当事者はもちろん部外者も思いがちですが、ライプニッツやヴィトゲンシュタインは、トートロジー(自同律)に還元できる数学的真理や論理学的真理のほかに、絶対的な真理はないことをつとに透察していました。全宇宙という大自然の普遍的真理を確立するには、地球はあまりにも局所的でヒトの歴史はあまりにも短かすぎるのです。ライプニッツはだからこそ、歴史的真理を重視しました。私たちがどのような生を歩んでいくかにより形成される真理も、尊さに変わりはないと。

十川治江(工作舎編集長)

*この記事は出版梓会 出版ダイジェスト第1821号「編集者登場」から一部を転載しました。




■関連図書(表示価格は税別)

■地球外生命関連図書
  • 地球外生命  大島泰郎 講談社現代新書 660円
  • 地球外生命体  アミーア・D・アクゼル 原書房 1800円 
  • 宇宙生物学への招待  F・ロランほか (文庫クセジュ)白水社 951円
  • 日経サイエンス2000年10月号 特集地球外生命体を求めて
  • ファースト・コンタクト—地球外知性体と出会う  金子 隆一 文春新書 720円
  • 宇宙人探索のパイオニアたち  D・W・スウィフト編 桜井邦朋 共立出版 4660円

    ■1750-1900 工作舎関連図書
  • 銀河の時代 上・下  ティモシー・フェリス 各2200円
  • ライプニッツ著作集  8200円〜17000円
  • 世界の複数性についての対話<  フォントネル 1900円
  • 大博物学者ビュフォン  ジャック・ロジェ 6500円
  • 色彩論  ゲーテ 25000円
  • ダーウィン  A・デズモンド+J・ムーア 18000円



  • ■書評

    井田茂氏(『遊星人』2003年9月)
    …系外惑星研究に携わっている評者にとって、欧米研究者の議論の中で、しばしば出てくる“神に選ばれた惑星=地球、神に選ばれた生命=人類”という感覚と、SETIやアストロ・バイオロジーへの強い興味(スター・トレックなどの一般的人気も同系列のものだろう)といった“生命は宇宙に充満している”という感覚が、どうして共存しているのか不思議で仕方がなかった。本書を読むと、西洋の思想家たちは、キリスト教のもとに、この唯一絶対世界論と複数世界論の矛盾した考えの相克にずっと悩み続けて来たことがわかる。つまり、キリストは唯一絶対で、そのキリストが生まれた地球は特別なのだという考えがある一方で、神は全能なのだから地球だけでなく、他の星にも生命を授けるに違いないという考えもあるわけである。一人の思想家でも、時期によって絶対的唯一世界論と多世界論の両極端の間を大きくぶれることがある。多くの日本人にはあまり実感できないが、この矛盾は西洋の人々にとっては大きな問題であり、西洋の科学者にとってもそれは同じであるようだ。
    本書には、ラプラス、ボーデ、ハーシェル、スキアパレリ、ロウエルといった、惑星科学や天文学ではおなじみの人々が次々と登場する。惑星科学は非常に強く文化と結びついた学問であることが実感される。




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