アジアの音・光・夢幻[詳細]
村人たちは、ごく自然に神々や精霊たちと交感しあい、
踊りやしぐさのただ中で動物や虫へとたやすく変身する。
朝いっせいに花開く蓮華は、その清純な花冠で、
一瞬の太陽の輝きをこの地上に出現させる。
それぞれが人間と自然との濃密なかかわりを映しだし、
美のかたちを重ねあわせて、
森羅万象を艶やかに縫いとる複雑な織物を織りあげてゆく。
------本書、第1章「宇宙軸はここに・・・」より
*「杉浦康平デザインの言葉」シリーズ概要はこちら
■目次より |
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【1】
発光するバリ島の山河宇宙軸はここに
「宇宙の呼吸」、布はためかせ王城(ゾン)を鳴らす
風のなかのマンダラ
掌のなかの聖地
ブータンの切手をデザインする
光の世界、闇のこころ
【2】
蓮華の美アジアの美…神的な愛…豊穣と多産…
天空の太陽…天上の光…
仏陀の教え…神の足跡…マンダラを咲きいでさせる…
仏たちの母胎…宇宙模型…万物の開花…
美を超越した花…
アジアの生命樹
サイード・モスクの窓飾り…桃果桃源図…
桜樹に文字文様小袖…
扶桑の樹…インドの話す樹…シカモアの樹…
ペーズリー文様…グヌンガン…曳山・岩戸山…ガンダーラの仏舎利…
【3】
インドの文字重層性の魅力
バンヤンの樹の下で
大地を飲む
雷霆(らいてい)の光に触れて
風を着る
----SENSITIVE MIRROR イスラムの水鏡-----
【4】
大自然を体内化する力士たちカミ(紙)はカミ(神)であった
火と水の渦
火を噴く宇宙亀
李朝民画の「ひらかれた扉」
中国の健身球─音と手ざわりの魅力
コノハムシ的時空間
ラルースを食べた犬の話
悪食のイヌ
【5】
マハリンガムの笛・音霊の響き精霊との交感の響き
・・・きらめく声と光のマンダラ
壺(ガタム)の響き
天の気、地の霊に感応する
「火」と「霊」の出会い、幽明の舞い
二つであって一なるもの
海のなかの「叫び」
香絃花
【6】
香気豊かに五感を結ぶ ----中村祥二さんとの対話
■関連図書(表示価格は税別) |
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■関連情報 |
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●2011.10.21〜12.17 武蔵野美術大学美術館「杉浦康平・脈動する本」展
武蔵野美術大学美術館で杉浦康平さんの展覧会「杉浦康平・脈動する本 デザインの手法と哲学」開催。代表的なブックデザイン約1000点を展示する、いわば集大成的な展覧会。杉浦さんが心血を注いで取り組んだブックデザインを中心にすえ、 代表作、および半世紀を超える仕事を一望し、独創力にみちたデザインの核心に迫り、大きな話題となりました。
会場限定販売の図録は、雑誌デザインを集成した『疾風迅雷』と対をなし大好評。完売したそうです。
杉浦康平・脈動する本/武蔵野美術大学サイトへ
●2011.12.1〜12.24 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
「杉浦康平・マンダラ発光」展
杉浦デザインの頂点に位置する「マンダラ」を主題にした豪華限定本、『伝真言院両界曼荼羅』、『天上のヴィーナス・地上のヴィーナス』、『西蔵<曼荼羅>集成』の3冊を展示。
杉浦康平・マンダラ発光/gggサイトへ
■書評 |
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●AROMA RESEARCH no.50(フレグランスジャーナル社/2012年5月)書評
濃密なアジアから、さまざまな香気がこぼれ落ちる。バリ、チベット、インド、憧れをかきたてられるブータン、蓮華の美、アジアの生命樹—シカモアの樹、ペーズリー、桜、扶桑の樹や仏舎利など。また、五感をひらく装い=皮膚を解放することなどを通して、アジア伝統の服の素晴らしさについても触れられる。
…巻末には「中村祥二さんとの対話—香気豊かに五感を結ぶ」が収められ、香りについて、香りを食べる神ガンダルヴァを軸として盛り上がり、五感は分断されたものでなくつながっており、香りを感じるとは五感を使って感じることでもあるとの、本全体のテーマにもつながる話が展開される。
●2011.12.18 毎日新聞 藤森照信氏「今年のこの3冊」
卓越した目と優れた言葉が、アジアにとうとうと流れるデザインや音楽の中に分け入っていく。何であれ著者の仕事に導かれて進めば、アジアの奥に人類に普遍が見えてくる。目からウロコが落ち、耳は洗われる。
●2011.12.10 図書新聞 杉浦康平インタビュー
「エディトリアル・デザイン」の根源
「気脈」が脈動する杉浦デザインの深奥に迫る
…今日の社会で白を好み、整然たるデザインを好むというのは、広告がノイズを嫌うのと同じように、「取り繕う社会」「こうでありたい社会」への願望の表現になっているのではないか。あるいは、まだ到達しえないステータスへの憧れであって、「本音」が吐けない。…デザインが活気づくためには、どれほどの本音を取りこむか、取りもどすかにかかっている…。(聞き手:赤崎正一)
●アイデア 2011.11月号
今回はアジアの伝統芸能や文化から触発された杉浦のひらめきと洞察のエッセイ群が中心となっている。…グローバリゼーションの波を受け、現在はIT大国として発展しているインドが、伝統を忘却した日本と同じ道を歩んでしまう危惧の念も背景にあるのだろう。杉浦が見たアジアの風景はいつか本書の中にしかなくなってしまうのかもしれない。そういう寂寞とした記録としても読める。
●ミュージック・マガジン 2011.10月号
…タイトル通り、アジア諸国の衣服や音楽、曼荼羅などをテーマにしたもので、70年代から00年代まで、新聞や各種雑誌、パンフレット、ライナーノーツまで初出の媒体はさまざまだが、一貫した文体に驚かされる。