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文字の霊力(れいりき)[詳細]

目次著者紹介関連図書関連情報書評


アジア図版-蝶

漢字と身体の記憶……   
印す文字、祀る文字……
壽字爛漫、変化する文字…… 
「手」文字の象……

*「杉浦康平デザインの言葉」シリーズ概要はこちら

アジア図版-鳥



■目次より

はじめに 文字の生息圏を歩く

【1】
「文字」を巡って------漢字からクレオール文字まで------
  松岡正剛さんとの対話

【2】
人間・線・音のつながり 漢字のカタチ1
森羅万象のざわめきを映す 漢字のカタチ2

【3】
方形の大地に根をのばす 漢字のカタチ3
印す文字、祀る文字、奏でる文字 漢字のカタチ4

【4】
木の音、本の響き
文字の海、魚が吐く 原稿用紙の謎1
マカラが吐く、豊穣の海 原稿用紙の謎2
うねり・波うつ宇宙山 山文字の謎1
産み・増殖する「三つ山」の気 山文字の謎2
「手」文字の象(カタチ)
日・月の輝き
「寿」「福」融合

【5】
寿字爛漫、変幻する文字 漢字のカタチ5
寿字爛漫森羅万象と照応する 漢字のカタチ6
漢字の記憶、身体の記憶とむすびつく 漢字のカタチ7

蝶



「間」の展覧会のポスター

【1】 松岡正剛さんとの対話「文字を巡って」より

松岡:かつてデザインされた東京画廊のパンフレットや「間」の展覧会のポスターや文学者の全集の装幀などの仕事に見られるように、漢字だって扱い方によっては原初のパワーを蘇らせることができると思うんです。
とくに、活字になった漢字は、いったん印圧のなかで線とインクと紙とが混じって、ノイズを伴いますね。それを印字された文字の場ごと引き上げて、デザインのなかにもう一度適用したという、あの杉浦さんの方法は、漢字をその生態圏ごと取り出すものとして、非常にショックだったし、これまでにない新しさだと感じています。

杉浦:あのころは、活字による文字表現について、いろいろなことを考えていました。
…活字はしょせん社会化された文字なのだけれど、この活字がわれわれの眼前に出現する直前の過程、一般の人が見ることができない生産過程での働きを重ね合せて、文字組み表現の語法にしてみたいと思ったんです。

福岡・英彦山神社の護符

【2】「森羅万象のざわめきを映す 漢字のカタチ2」より

「文字であることを超えてしまった不可思議な文字」群の典型的な例は、一群の「護符」や「靈符」である。…書き記された靈符は、簡単に読み解けない文字群である。むしろ、読めそうで読めない文字だ…ということに意味がある。魔を降す力を放射する、境界線上の文字群である。
この六つの眼が睨みつける複合文字の靈符は、九州・福岡の英彦山が配布する、泥棒よけの護符である。




■著者紹介:杉浦康平(すぎうら・こうへい)

「文字の枝葉には、人間のふるまいの総体が封入されている」と直観、文字と向きあい、とりわけ漢字を逍遥する。その探求の経緯を記したエッセイを本書に再録した。 文字に関する著作として『文字の宇宙』(1985、写研)『文字の祝祭』(1995、同)、『文字の美・文字の力』(2008、誠文堂新光社)、『アジアの本・文字・デザイン』(2005、DNPグラフィックデザインアーカイブ)などがある。

1932年、東京生まれ。東京芸術大学建築学科卒。早くからグラフィック・デザインの世界で注目を浴び、ブックデザインや展覧会企画を手掛けてきた。その半世紀余にわたる作品群が、2011年、寄贈先の武蔵野美術大学美術館・図書館主催『杉浦康平・脈動する本』展で披露された。

現在、神戸芸術工科大学名誉教授、および同大アジアンデザイン研究所所長。アジア各国のデザイナーたちの活発な交流の場である当研究所が開催した第1回国際シンポジウムの記録が『動く山—アジアの山車』(2012、左右社)として出版されている。

杉浦康平_肖像


■関連図書(表示価格は税別)

  • 杉浦康平デザインの言葉 第1弾 多主語的なアジア  杉浦康平 工作舎 2800円
  • 杉浦康平デザインの言葉 第2弾 アジアの音・光・夢幻  杉浦康平 工作舎 2800円
  • 宇宙を叩く  杉浦康平 工作舎 3600円
  • 人間人形時代  稲垣足穂 工作舎 2200円
  • 全宇宙誌  松岡正剛+杉浦康平 工作舎 [品切]
  • 神戸芸術工科大学レクチャーシリーズ杉浦康平編 工作舎 2500円〜3900円



  • ■書評

    「書道界」2014年12月号 臼田捷治氏書評
    漢字が放つオーラを透視し 多次元的な理解に誘う  
    …著者はタイトルを「霊力」ではなく旧字の「靈力」としたことへの強いこだわりを表明している。旧字にある「口」三つの並列は、元は巫女などが呪術を発揮するための祈祷用祭器であり、したの「巫」はふたりの巫女が向かい合って祈る姿を表している。そのように「人のふるまいをのせ」、「呼吸し、血脈をもつ」漢字がそなえる超越性への眼差しが本書の基調音。…
    文字、とりわけ漢字が放つ只ならぬオーラを透視する眼力とそれを裏付ける人類の表象世界全般への深い知見。そんな著者の情熱的な語り口が、私たちに新鮮な驚きを伴う多次元的な理解へと誘う。掲載図版も豊富。

    2014.11.9 東京新聞/中日新聞 武田雅哉氏書評
    魅惑の漢字デザイン
    …中国政府は簡略字を提唱しているが、人民は昔の複雑な漢字のほうがお気に入りと見えて、なかなか浸透しない。文字はつまるところ道具にすぎないのだが、道具にもあれこれ思い入れを抱き、こだわってしまうのが人間というものらしい。それは文字に「靈力(れいりき)」があるからだ。
    本書はまさに便宜性だけでは測りきれない、われわれを魅了する文字の靈力を周到にレイアウトされた多くの図版とエッセイとで綴った宝石箱のような一冊。…全文は東京新聞サイトへ

    「大東書道」2014年11月号(書道研究所刊) 古賀弘幸氏書評
    文字は生きている! 杉浦康平の文字論
    ただならぬ聖性を帯びた奥深いオブジェ=漢字をテクノロジーによってデジタルに還元してしまったのが、現在の私達なのですが、その生命を救い出し、息を吹き込み、生活の中に蘇らせようとするのが、杉浦氏の目論見だと思われます。文字はまさしく「生きている」のだと思います。筆と墨によって漢字を不断に賦活しようとする——これは言うまでもなく、書とは無関係ではありません。

    WEBRONZA「神保町の匠」 松本裕喜氏書評
    文字の霊はどこに宿るか
    杉浦さんの本を読んでいつも感心するのは、根源的な問いかけが発想の元になっていることだ。この本では、私たちがふだん接している文字、とりわけ漢字についてのさまざまな「なぜ」が考察されている。以下、その一端を紹介していきたい。
     杉浦さんは、なぜ「線」が文字の主役になるのか、と問いかける。…
     本書は、「漢字という生きもの」の不思議な力が、おびただしい図版とともに解き明かされる、発見に満ちた本である。関心をもたれた方は、ぜひ実際に手にとって確かめてみてほしい。これは、本でしか表現できないことを書き記した本なのだ。

    全文はWEB RONZAサイトへ|「神保町の匠」は三省堂書店神保町本店4Fにて展示販売。



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