「デレク・ベイリーを聴く会」vol.06報告
音楽家/批評家の大谷能生氏をお迎えしたサウンドカフェ・ズミ。
日中の暑さも一段落し、すっかり秋の気配が漂う8月の最終土曜日に開かれた「デレク・ベイリーを聴く会」vol.06。今回、初めて参加された方も多く、足をお運びいただいたみなさま、ほんとうにありがとうございました。vol.01の様子|vol.02の様子|vol.03の様子|vol.04の様子|vol.05の様子
特別ゲストは音楽家/批評家の大谷能生さん。『ジャズと自由は手をとって〈地獄〉に行く』(本の雑誌社、2013)や、菊地成孔氏との共著『東京大学のアルバート・アイラー:東大ジャズ講義録・歴史編/キーワード編』(文春文庫、2009)などで、新たな視点によるジャズ史へのアプローチをされてきました。
大谷さんがデレク・ベイリーを初めて聴いたのは90年代の前半、大学のジャズ研に入って即興演奏に熱中していた時期。Company 6 & 7 (Incus CD07, 1991) やSolo Guitar Volume 2 (Incus CD11, 1992)は特に愛聴したとのこと。「デレク・ベイリーはいまだに思い出したように聴きますが、そのたびにいいですね」。
著書のなかで、「デレク・ベイリーはイギリス的な音楽家」とされているので、その理由をお聞きすると、「それはイギリス経験論による世界の捉え方という文脈で語ったんだと思いますが、イギリス経験論を代表する18世紀の思想家に、デヴィッド・ヒュームという人がいます。彼の主張では、絶対確実だと思われているような「法則」も、それは人間的経験があるやり方で結びつけられたものに過ぎない。世界とは経験のコレクションであって、それ以前に前提とされる基盤はない、と主張していて、デレク・ベイリーはまさにそういう音楽に聴こえるんですね。音と音を時間の中に置いていけばつながってしまう。しかし、そこにはルールなどはないというわけです」とのお答えが返ってきました。
さて、今回聴いたデレク・ベイリーのアルバムですが、前々回から1970年録音のアルバム群を聴き、ようやく最後の2枚にたどり着きました 。dzumi.list6.2
盟友トニー・オクスリー(ドラム、パーカッション)の3枚目のリーダー作Ichnos (RCA SF8215)、そしてポール・ラザフォード(トロンボーン)、バリー・ガイ(ベース)との三人組Iskra1903で、ドキュメンタリー映画監督マイケル・グリグスビーの作品のために録音したBuzz Soundtracks (Emanem 4066)です。とりわけIchnosに収録されたオクスリーのパーカッション・ソロは圧倒的で、大谷さんはトニー・オクスリーとマックス・ローチの共通項を指摘されました。
続いて1971年録音のアルバム群に入り、Spontaneous Music Ensembleの‘So What Do You Think?’(Tangent TGS 118)、デレク・ベイリー初のソロアルバムであるSolo Guitar (Incus 2)、デレク・ベイリーとエヴァン・パーカー(ソプラノ・サックス)が参加した実験音楽家Basil KirchinのWorlds Within Worlds(Columbia SCX 6463)の3枚を聴きました。
Solo Guitarでは、A面に収録された即興演奏の楽曲と、B面に収録された作曲された楽曲(ミシャ・メンゲルベルク、ウィレム・ブロイカー、ギャヴィン・ブライヤーズ作曲)を聴き比べ、大谷さんも「こんなに面白いアルバムだったんだ」と感嘆。特に即興演奏の楽曲では、「ヴォリューム・ペダルを多用して、ギターのアタック音を消すなど、きわめて電子音楽に近いサウンドを構築している。まさにリアル・ライヴエレクトロニクス」と指摘されました。
さて、次回vol.07では、特別ゲストに『間章著作集』(月曜社刊)の編集を終えらればかりの編集者の須川善行さんをお迎えします。デレク・ベイリーを初めて日本に招聘したこの鬼才批評家をめぐって、貴重なお話がたっぷりとうかがえると思います。繰り返しで恐縮ですが、できるだけ事前のご予約をお願いします。満席の場合はお立ち見となります。スタンプカードをお持ちのみなさま、いつも本当にありがとうございます。引き続きよろしくお願い申し上げます。
デレク・ベイリーの著書『インプロヴィゼーション:即興演奏の彼方へ』の存在は大きかったと語る大谷能生氏。
Spontaneous Music Ensemble ‘So, What Do You Think?’(Tangent TGS 118, 1971) のジャケット裏面に載せられた各パートごとの譜面をもとに、楽曲の構造分析をする大谷氏。
『間章著作集』(月曜社刊)に挟まれて、ちょっぴり嬉しそうな『デレク・ベイリー:インプロヴィゼーションの物語』。右側の著作集III『さらに冬へ旅立つために』は、この日に見本が完成したばかりのホヤホヤ。
最後に、いつもお世話になっているサウンドカフェ・ズミの4つの魅力についてご紹介しましょう。
サウンドカフェ・ズミの魅力その1
<ブックカフェ並の蔵書>
店内奥の書棚には、ジャズ、思想関連の書籍がズラリ。店主の泉さんにお願いすれば、貴重なジャズ関連雑誌の数々も見せていただけます。
サウンドカフェ・ズミの魅力その2
<井の頭公園を見渡す眺望>
井の頭公園に近いビルの7階にあるため、窓からの眺望は抜群です。吉祥寺のカフェの中でもベスト1と言っても過言ではないでしょう。
サウンドカフェ・ズミの魅力その3
<こだわりのオーディオシステム>
大音量でもしっかりと音像が聴き取れるのは、英国が誇るオーディオメーカー、ATC社、Rogers社のスピーカーのおかげです。
サウンドカフェ・ズミの魅力その4
<日本随一のサウンド・アーカイブ>
フリージャズ系、フリーミュージック系はもとより、アヴァンギャルド系のレコード/CDの数々はやはり最大の魅力です。「デレク・ベイリーを聴く会」では、カフェ・ズミ常連さんのコレクターの方にもご協力をいただいています。写真はその方からお借りした、デレク・ベイリー参加の激レア盤Basil KirchinのWorlds Within Worlds(Columbia SCX 6463, 1971)。大谷能生氏いわく「デレク・ベイリーのサウンドをサイケデリックなものと勘違いして起用した、まさに怪盤!」とのこと。
「デレク・ベイリーを聴く会 」vol.07 :70年代の音源[5]
ゲスト:須川善行(『間章著作集』編集者)
2014年9月27日(土)18:00〜
会場:Sound Cafe dzumi サウンドカフェ・ズミ(吉祥寺)
JR吉祥寺駅南口より徒歩5分
武蔵野市御殿山1-2-3 キヨノビル7F tel:0422-72-7822
入場料:1500円(ドリンク付)
先着20名 要事前予約:event.dzumi[a]jcom.home.ne.jp([a]を@に変えてください)
件名「デレク・ベイリー」、氏名、人数、お電話番号をご連絡ください。
*満席の場合はお立ち見となりますので、できるだけご予約をお願いします。