杉浦康平先生に関する本が次々刊行
左から『杉浦康平と写植の時代』『本が湧きだす』『杉浦康平のアジアンデザイン』
2023年3月に刊行された、阿部卓也さんの『杉浦康平と写植の時代—光学技術と日本語のデザイン』(慶應義塾大学出版会)が話題です。
戦後日本のグラフィックデザインを牽引した杉浦康平先生が、「写植という新たな技術といかに向きあい、日本語のデザインといかに格闘したのか。日本語のレイアウトやブックデザインに与えた決定的な影響を明らかにする」書。
著者の阿部卓也さんは、愛知淑徳大学創造表現学部メディアプロデュース専攻准教授、デザイナー。東京大学大学院情報学環特任講師時代に日本記号学会にて進行した、杉浦先生と石田英敬教授との対談が、『本が湧きだす』に「メディア論的「必然」としての杉浦デザイン」として収録されています。
造本は、長年杉浦事務所に勤めた佐藤篤司さん。表紙は漢字で構成された杉浦先生の顔が浮きあがります。
また、『杉浦康平のアジアンデザイン』(杉浦康平+神戸芸術工科大学アジアンデザイン研究組織=著、新宿書房=発行、港の人=発売)が5月末に発売。
「デザイン実作の過程、技法、心情を、いま初めて明らかにする、長時間にわたる連続インタビュー」という大型版(AB変型上製)でカラーも豊富。杉浦事務所の元スタッフ、赤崎正一さんが中心になって聞き手を務めたインタビューが4本掲載され、編集・デザインも手がけたとあって美しい造本で、巻末の年表までも手が込んでいます。
赤崎さんと杉浦先生との対談「エディトリアル・デザインの周縁」が『本が湧きだす』に収録されています。
『杉浦康平のアジアンデザイン』に掲載された「神戸芸術工科大学レクチャーシリーズ」
『杉浦康平のアジアンデザイン』巻末の年表
『本が湧きだす』は、ブックデザインをテーマに杉浦康平先生の言葉を集めた「杉浦康平デザインの言葉」シリーズ第4弾。
代表作『全宇宙誌』『伝真言院両界曼荼羅』などの制作背景を語る「一即二即多即一」、細江英公『薔薇刑』などの「1960-70年代の写真集のデザイン」、松岡正剛さんとの対話「熱い宇宙を着てみたい」、鈴木一誌さんと戸田ツトムさんが聞き手となった「現在進行形のデザインのために」なども収録し、読み応えある一書。
「杉浦康平デザインの言葉」シリーズ
杉浦先生に注目が集まっている今、ぜひ『本が湧きだす』をはじめ、「杉浦康平デザインの言葉」シリーズをお読みください。
■杉浦康平デザインアーカイブ「デザイン・コスモス」リニューアル
武蔵野美術大学 美術館・図書館の杉浦康平デザインアーカイブ「デザイン・コスモス」が2023年6月30日にリニューアル。「雑誌」のカテゴリーを新設し、デザイン手法インデックスを増補改訂するなど、見どころ満載。 佐藤篤司さんデザインのバナー4種を公開します。
■別冊太陽 日本のブックデザイン一五〇年 装丁とその時代
「日本近現代装幀史をひもとく100冊」に、『人間人形時代』(装幀=杉浦康平・中垣信夫・海保透)紹介。直径7ミリの穴が貫く破天荒な挑戦
…穴が貫通することで、紙の集積からなる三次元のオブジェである書物独自の空間性を鮮やかに浮き彫りにしているのだ。