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第1回 作品の中に消える美術家

伝説

画家が自分の作品の中に消える——。そうした伝説は、時代、地域を超えて流布している。この伝説には様々なヴァリエーションがあり、ヨーロッパでも知られていた。

ドイツの哲学者エルンスト・ブロッホ(1885〜1977)は、出典を明らかにすることなく、自分が描いた絵画の中に消えた昔の中国の画家のエピソードを記している。

その昔、ある中国の画家が友人たちに自分の最新作を見せた。そこには庭園が描かれ、一本の小道が森と水辺を通り、宮殿の小さい赤い扉まで続いていた。しかし、絵画を見ていた友人たちが画家の方をふり向くと、画家の姿はもはや彼らの傍らにはなく、絵画の中にあった。画家は赤い扉に向かって小道を歩き、その前に立ち止まった。そして、ふりかえってにっこり笑い、扉を開いてその中に消えた。

ブロッホがこの逸話を人間の死をめぐる考察の中で言及し、作品の中に消えることを肉体がこの世から消滅する一つのあり方と見なしていることも注目される。というのも、美術家と作品の一体化は、美術家の死の克服の戦略に深く結びついているからである。


《絵の中に消える呉道元》
《絵の中に消える呉道元》
呉道元が絵画の中に消えたという伝説も知られている

オーストリアの作家シュテファン・ツヴァイク(1881〜1942)は『オーギュスト・ロダン』という長編韻文作品(1913)において、彫刻のあいだを通ってアトリエの中をよろよろと歩む、年老いて疲弊したロダンの姿を描写している。そこではロダンが「死の中に歩んでいくかのように」、まったく孤独でぼんやりと足を引きずっている。

この引用は最初の詩節の終わりにあり、彫刻の本質やその制作者の名声について、時間と持続、完成と不死についての考察が続く。そして、最後の詩節は次のように締めくくられる。「ある伝説の中で言及されているように、巨匠は自分の作品の中に静かにはいっていく」。ツヴァイクが前述した絵画の中に消える画家の伝説に言及していることは疑う余地がない。

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