●キルヒャー・驚異の図像 09
『キルヒャーの世界図鑑』よりセラーピス
キルヒャーの主著『エジプトのオイディプス』は神聖文字を解読するにとどまらず、エジプトの哲学と宗教について、現存する断片情報を精査し、そこから発展した体系を比較した。その中で、ヘルメス学や新プラトン派の研究は現在でも高く評価されている。
図のセラーピスはエジプト神。イシス信仰とともに帝政ローマに迎えられ、キリスト教に駆逐されるまで隆盛をきわめた。キルヒャーの解釈によると、D〜Hの狼、ライオン、甘える犬の頭はそれぞれ過去、現在、未来を表わす。すべてに巻きついているのが時の蛇であり、その無慈悲な円環状の道すじを解きほどいているところである。(『エジプトのオイディプス』より)