●月島を歩く〜『月島物語ふたたび』の世界へ 04
増殖する植木鉢
四方田:路地でよく見かける植木鉢も面白いことにある時から増殖する。大正年間に、高潮があって伝染病の流布を防ぐために護岸を造るんだけど、護岸の空いている場所に住民はどんどん植木を植えていった。不法と知りつつ、鉢植えを並べていった。言葉を変えるとスラム化なのかもしれないけれど、都市計画とは別の動きが生じていて、住民による再属領化が起こっているような気がします。
陣内:うん、面白い現象ですよね。海外の都市計画に基づいて作られた街を見ても、グリッドがきっちりしていて美しいけれど、そこに生活が溢れ出したり、住民によって表情が変わっていくところは少ないですね。アジアは別ですけれども。月島の都市構造は強権的に作られたわけだけど、それとはまったく逆の生きている空間が形成されていて面白い。
(『月島物語ふたたび』2006 陣内秀信・四方田犬彦対談
「月島的なるもの」をめぐって より)
■月島ならではの光景の一つが鉢植えです。玄関先や歩道、空地と、わずかなスペースによく手入れの行き届いた鉢植えが並びます。ここ護岸にも、塀のブロックごとに栽培者が異なるのか、様々な鉢植えが溢れています。入口に設けられた金網に貼紙が…。「植木や草花をつくっている皆様へ」で始まる役所のお知らせで、この一帯を公園として整備する予定とのこと。鉢植えの今後の行方が気になります。(編集部)