●月島を歩く〜『月島物語ふたたび』の世界へ 07
勝鬨橋でゆれる
勝鬨橋はどうなったか。勝鬨橋は人々の期待や失望と関わりなく、十年一日のごとく日に五回の開閉を繰り返し続けた。(中略)
1970年、ようやく橋が開閉を終える日が来た。東京湾の内側へむかって埋立地がどんどん建設されてゆくにつれて、船舶の航路が変わったことと、晴海通を通行する車輛が増えたことが原因である。今ではもう誰もがこの橋に「東洋一」の栄光の時代などなかったかのように、通行している。タクシーはいつもながらの渋滞を嘆き、バスはあいかわらずのろのろと進む。欄干に手を置いてぼんやりと隅田川の鉛色の水を眺めている人もいれば、几帳面にジョギングをしている人もいる。座興で橋の開閉を目論んでいる市民団体もあると聞いたが、現時点でもう一度銹びついた機械類に活を入れるには数億円はかかるだろう。
(『月島物語ふたたび』第十回 勝鬨橋と月島独立計画より)
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■アーチの曲線が美しい勝鬨橋は1940年に開通しました。かつて1日に5回、橋中央部の二枚の鉄板が起立し、その間を大船舶が通行したといいます。その痕跡は今も随所に残っています。橋の操作を行う運転室や見張り室、歩道に設置された信号機。橋の中央で鉄板の境目にまたがると、車の振動で大きく揺れ、思わず立ちすくみます。(編集部)
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