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デレク・ベイリー [詳細]
Derek Bailey and the Story of Free Improvisation

目次著者紹介関連図書関連情報書評



次に何が起こるのかを
正確に知っていることほどつまらなく、

退屈なことはない。

フリー・インプロヴィゼーションの可能性を切り拓き、数多くのミュージシャンに影響を与えたギタリスト、デレク・ベイリー。本書はフランク・ザッパ研究で知られる英国気鋭の批評家が、ベイリー本人や共演ミュージシャンたちを長期取材し、その膨大な証言録をコンサート記録やアルバム・レヴューなどとともに再構成。フリー・インプロヴィゼーションが誕生した時代背景、ベイリーがその道を選ぶに至った音楽観と独創的な演奏哲学、ベイリーが組織した即興演奏家集団「カンパニー」の変遷などを浮き彫りにする。60年代以降の英国音楽シーン、さらには日本も含むインターナショナルなシーンに息づく「自由であり続けること」の果敢な物語。




■目次

序章 自由について
第1章 子ども時代、十代: 1930-1951
第2章 ギタリスト稼業: 1950-1963
第3章 ジョゼフ・ホルブルック・トリオ: 1963-1966
第4章 ソロ演奏と自由の問題: 1966-1977
第5章 カンパニー・ウィーク: 1977-1994
第6章 インプロヴ・インターナショナル
最終章 インプロヴィゼーションについて
付録1 デレク・ベイリー/インタビュー1998年
 デレク・ベイリーの「めかくしジューク・ボックス」完全版 インタビュアー◎ベン・ワトソン
付録2 デレク・ベイリー/インタビュー1978年・1979年
 即興音楽と時間──演奏の自在境におもむく インタビュアー◎木幡和枝
付録3 デレク・ベイリー・ディスコグラフィー 1968-2013
付録4 インカス・ディスコグラフィー


◎ギターについて真剣に考えれば、いずれデレク・ベイリーにたどりつく。そこで知ったことはその人の世界観を粉々にし、知っているつもりだった20世紀の音楽のあらゆる事実について、あらためて考えさせられる。

◎ベイリーは主張している──即興ほど面白いものはないと。電子音楽を聴くにせよ、ロック・グループを眺めるにせよ、交響楽団が名曲を掻き鳴らすのを聴くにせよ、次に何が起こるかを正確に知っていることほどつまらなく、退屈なことはない、と。

◎即興には頑固な生真面目さとか、高邁な厳粛さ、といったイメージがはりついている。なぜそんな誤解が生まれたのだろうか。ゲーテは、「陽気さ」は進歩的な文化の本質的な要素だったと主張した。この姿勢が、フランク・ザッパとデレク・ベイリーの共通点だ。

◎ベイリーの思想は、ヘラクレイトスの思想と合致する──同じ川に二度脚を浸すことはできない。水は変わる、自分も変わる、なにもかも変わる。ファースト・テイクはその一回性ゆえにベストなのだ。

◎真正面から断言しよう。本書は矛盾に満ち、論争的で、未完成の書物だ。そうしようと、あえて意図して書かれた本だ。端的に言えば、即興的で弁証法的な本だ。本書を想像力豊かで思慮深い読者の遊び場にしていただきたいと思っている。
──ベン・ワトソン(本文より)




■デレク・ベイリー Derek Bailey 1930-2005

1930年1月29日、イギリスのヨークシャー州シェフィールドに生まれる。独学でギターを習得し、50年代から60年代にかけて、ダンス・ホール、劇場、放送局、レコーディング・スタジオなどで、プロの“コマーシャル”ギタリストとして従事。60年代半ば、トニー・オクスリー、ギャヴィン・ブライヤーズらとジョゼフ・ホルブルック・トリオを結成し、フリー・インプロヴィゼーションを中心とした音楽活動を実践する。70年、エヴァン・パーカーらとともにレコード・レーベル「インカス」を設立。以降、ソロをはじめ、自身が組織する即興演奏家集団「カンパニー」とともに、インプロヴィゼーションの可能性を追求。78年以来、数度来日コンサートを行ない、特に81年の田中泯、ミルフォード・グレイヴスらとの共演、「MMD計画」は大きな話題を呼んだ。90年代以降、共演者の幅はさらに広がり、ジョン・ゾーン、パット・メセニー、エレクトロニカ系アーティストともレコーディングを行なった。2005年12月25日、運動ニューロン疾患(MND)のため死去。翌年日本で開かれた追悼コンサートには、田中泯、近藤等則、灰野敬二、大友良英、大熊ワタルほか共演経験のあるアーティストが多数参加した。 著書に『インプロヴィゼーション──即興演奏の彼方へImprovisation: Its Nature and Practice in Music)』(Moorland Publishing, 1980 邦訳工作舎刊/revised edition: Da Capo Press, 1993)がある。

■著者紹介

ベン・ワトソン Ben Watson

1956年、ロンドン生まれ。音楽/文化批評家。『ザ・ワイヤー』『ハイ・ファイ・ニューズ』などの音楽専門誌に寄稿。テオドール・アドルノ、フランクフルト学派、状況主義(シチュアシオニスム)の影響下のもと、独自の切り口で批評活動を行なう。フランク・ザッパに関する著作も多く、主な著書に『フランク・ザッパ──プードル・プレイの否定弁証法(Frank Zappa: The Negative Dialectics of Poodle Play)』(Quartet Books, 1995)、『フランク・ザッパ──コンプリート・ガイド・トゥ・ヒズ・ミュージック(Frank Zappa: The Complete Guide to his Music)』(Omnibus Press, 2005)、『アカデミー・ザッパ──第一回国際統合ザッパ学会議の記録(Academy Zappa: Proceedings of the First International Conference of Esemplastic Zappology)』(共編)(SAF Publishing, 2005)などがある。




■関連図書(表示価格は税別)

  • インプロヴィゼーション デレク・ベイリー 2300円
  • めかくしジュークボックス ザ・ワイアー編 2900円
  • 大ザッパ論2  大山甲日 5500円
  • スケルトン・キー  D・シェンク他 3200円
  • ハーディ・ガーディ・マン  ドノヴァン 3800円
  • 普遍音樂  アタナシウス・キルヒャー 4800円



  • ■関連情報

    ●2014.9.27 「デレク・ベイリーを聴く会 vol.08」(吉祥寺サウンドカフェ・ズミ)
    vol.08:70年代の音源[6]/ゲスト:五海ゆうじ(写真家)報告 >>>

    ●2014.9.27 「デレク・ベイリーを聴く会 vol.07」(吉祥寺サウンドカフェ・ズミ)
    vol.07:70年代の音源[5]/ゲスト:須川善行(『間章著作集』編集者)報告 >>>

    ●2014.8.30 「デレク・ベイリーを聴く会 vol.06」(吉祥寺サウンドカフェ・ズミ)
    vol.06:70年代の音源[4]/ゲスト:大谷能生(批評家/音楽家)報告 >>>

    ●2014.7.26 「デレク・ベイリーを聴く会 vol.05」(吉祥寺サウンドカフェ・ズミ)
    vol.05:70年代の音源[3]/ゲスト:平井 玄(批評家)報告 >>>

    ●2014.6.29 「デレク・ベイリーを聴く会 vol.04」(吉祥寺サウンドカフェ・ズミ)
    vol.04:70年代の音源[2]/ゲスト:今井和雄(ギタリスト)報告 >>>

    ●2014.5.31 「デレク・ベイリーを聴く会 vol.03」(吉祥寺サウンドカフェ・ズミ)
    vol.03:70年代の音源[1]/ゲスト:佐々木敦(批評家/早稲田大学教授)報告 >>>

    ●2014.4.26 「デレク・ベイリーを聴く会 vol.02」(吉祥寺サウンドカフェ・ズミ)
    vol.02:60年代の音源[2]/ゲスト:大熊ワタルさん(シカラムータ)報告 >>>

    ●2014.3.29 「デレク・ベイリーを聴く会 vol.01」
    ベイリーが遺した250枚以上もの関連アルバムを、年代ごとに1枚ずつじっくり聴きこんでいく連続イベント(毎月最終土曜日開催)。vol.01ゲストはベイリー著『インプロヴィゼーション』の翻訳でタッグを組んだ木幡和枝さんと竹田賢一さん。
    会場の吉祥寺サウンドカフェ・ズミには最高級のオーディオ機器が設備。カフェのオーナー、泉秀樹さんによる詳しいアルバム解説も必聴。
    vol.01:60年代の音源:報告 >>>

    会場:Sound Cafe dzumi サウンドカフェ・ズミ(吉祥寺)
     JR吉祥寺駅南口より徒歩5分
     武蔵野市御殿山1-2-3 キヨノビル7F tel:0422-72-7822
    入場料:1500円(ドリンク付)
    先着20名 要事前予約:event.dzumi[a]jcom.home.ne.jp([a]を@に変えてください)
    件名「デレク・ベイリー」、氏名、人数、お電話番号をご連絡ください。
    *満席の場合はお立ち見となりますので、できるだけご予約をお願いします。

    ●2014.2.17 DOMMUNE 刊行記念イベント
    2014.2.17(月)19〜21時
    退屈するな!〜『デレク・ベイリー インプロヴィゼーションの物語』(工作舎)刊行記念
    出演者:木幡和枝、大熊ワタル、泉秀樹、長門洋平、山崎春美
    司会:石原剛一郎(工作舎)、渡邊未帆
    報告 >>>

    ●2014.1.17 BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿 刊行記念トークイベント
    「デレク・ベイリー:即興の存在学をめぐって」
    木幡和枝(東京藝術大学教授)×大熊ワタル(CICALA-MVTA:シカラムータ)
    日時:2014.1.17(金)19:30〜20:30
    場所:BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿店内
    報告 >>>

    ●2014.1.15(水)18:00以降 BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿にて先行発売
    詳細は ディスクユニオン サイトへ>>>

    ●ディスクユニオン&工作舎特典
    ディスクユニオンと工作舎限定購入特典。特別ブックレット「DEREK BAILEY DISK INDEX」と栞6枚セット。詳細はこちら>>>。なお、工作舎分は完売しました。ディスクユニオンに多少残っているようです。ネット通販でも店舗でもお求めいただけます。 ディスクユニオン 通販ページへ >>>




    ■書評

    『ele-king別冊 プログレッシヴ・ジャズ』 山崎春美氏 関連記事
    Dでたらめだけが、Bばかにならない DEREK BAILEY 浜辺から
    「およそ音楽を嗜(たしな)むものとしてデレク・ベイリー(以下DB)を知らなければモグリだろう。それになんだって? 音楽を? 嗜む、だ? そうね。少なくとも窘(たしな)めるものじゃあないな。…
    2014年3月を皮切りにボクは案内人となった。勇んで欣喜雀躍し、小躍りしながら気持ちを高ぶらせている。まだ水先人としての正式な資格は有していないので、いまのところは一介の受付係でしかない。それも月に一度だけ催される「DBを聴く会」のみの受付係だ。…」
    と、「デレク・ベイリーを聴く会」第1回から6回までを丁寧に、かつ春美さんらしい絶妙な文体で紹介してくださっています。ぜひお読みください。

    週刊東洋経済 2014.5.17号 歳川隆雄氏(『インサイドライン』編集長)書評
    音楽で溶解する「組織と俺」の桎梏
    …ジャズや民俗音楽には即興がつきものだが、産業化著しい音楽の世界で新しいものを生む、予測不可能な結果を引き受ける勇猛。ソロ演奏よりアンサンブルの場面でこそ男気と配慮が問われる。勝負は技量だ。どこかで聞いたことのある言葉だ。一般社会でも企業内でも「組織と俺」の桎梏は身を賭して溶解させるしかない。
    「こちとら一回こっきりの即興演奏だ、CDもいいが一回聴いたら捨ててくれ」。ベイリーは瞬間の豊かさに賭ける。こんな身ひとつの革命が今も起こっているのだろうか。

    2014.4.24 ele-king(エレキング) 細田成嗣氏書評
    …ベイリーの著作における擬似対話形式を模したのだろうか、まるでこの希代の音楽家や彼と関係を有したさまざまな人物が傍らにいて語りかけてくるような構成を、本書はとっている。そのことを著者は「矛盾に満ち、論争的で、未完成の書物」への意図であり、つまりは「即興的で弁証法的な本」であると言うのだが、このことはベイリーの音楽に対して、たんなる読解を試みたのではなく、むしろ真っ向から立ちむかうような批評的視座をもって対峙しているのだということの、忌憚のない宣言だと受け取ることができるだろう。…

    2014.4.13 テレビ朝日「題名のない音楽会」大友良英さん紹介
    大友良英さんをゲストに迎えて「ノイズが音楽を豊かにする〜大友良英を作った3曲」。「あまちゃん」挿入曲の“隠し味”にノイズ・ミュージックがあり、ノイズ・ミュージックとは何かを探ると、音楽とは何かという根源的テーマにたどり着くという流れ。
    ひとしきりノイズ音楽をかけた後、「ノイズと違いますが」とおもむろに、書籍『デレク・ベイリー:インプロヴィゼーションの物語』を手に、ベイリーを紹介! 本をアップで映しつつ、「音楽の語法じゃないことをどうやってギターを使ってやるか。人が音楽と認識する語法をどうやってはずせるかを60年代に考えた人。それはすごく尊い。クラシックではジョン・ケージやクセナキスがやっていることを、この人は作曲ではなく即興でやろうとしていた人」と語り、ベイリー最晩年の曲「12週間後」をかけてくださいました。

    Sound & Recording Magazine 2014年4月号書評
    即興の革新者デレク・ベイリーの軌跡を詳細にたどる大著
    フリー・インプロビゼーションの創始者として有名なギタリスト、デレク・ベイリーは、即興に関する書籍として『インプロヴィゼーション』(工作舎)を残しているが、彼自身の音楽的軌跡を詳しくたどったものとしては、本書が初めてだろう。…<陰気なアドルノ派>と自称する著者の筆は、時に自身のこだわりが出過ぎるきらいがあるが、本書は2段組みのレイアウトで550ページを超えるという文章量であり、なおかつデレク本人や関係者へのインタビュー、著者自身が経験したコンサート評も豊富なので、デレクが実際に何をやったのかを知るために欠かせない一冊となっている。…

    CDジャーナル 2014年4月号
    唯一無二のギタリスト
    唯一無二という言葉がこれほどぴったりくる人もいない。ギタリスト、デレク・ベイリーが2005年に亡くなる前年に発表された評伝の、待望の翻訳が発売された。…

    2014.3.9 朝日新聞 佐々木 敦氏書評
    世界に向きあう自由のレッスン …「インプロヴィゼーション=即興」であるからといって、それは出鱈目とは全く違う。ギターであれ何であれ、その楽器に徹底的に習熟した上で、それを乗り越えるようにして、ありとあらゆる「音楽」の起源に潜在する一度切りの「自由=フリー」に賭けること。「フリー・インプロヴィゼーション」とは「世界」に向き合う「自由」のレッスンでもあるのだ。つまりこれは、けっして「音楽」だけの話ではない。

    ●2014.2.28 「大友良英のJAMJAMラジオ」で 『デレク・ベイリー』絶賛!
    日頃からデレク・ベイリーをリスペクトして止まない大友良英さんが、KBS京都ラジオ 2/28(金)24:30〜25:00放送の「大友良英のJAMJAMラジオ」にて、『デレク・ベイリー』を紹介してくださいました。『インプロヴィゼーション』にも触れつつ、30分番組丸々『デレク・ベイリー』の宣伝をしてくださったようなもの。本当にありがとうございます!

    番組説明「工作舎から今年1月25日に発売されたベン・ワトソン著 木幡和枝さん訳の「デレク・ベイリー インプロヴィゼーションの物語」が発刊されたことから久しぶりにデレク・ベイリー特集でした。」Podcastで視聴できます。>>> Podcast版は訳者の木幡和枝さんへの御礼で終わります。

    タワーレコード:intoxicate #108 2014年2月号 畠中実氏書評
    …のちにキング・クリムゾンのメンバーとなるジェイミー・ミューアを評価していたのはフリー・インプロヴィゼーションへの敬愛がなかったから、とするくだりは興味深い。そうであればあるほど、ベイリーは自由な演奏ができるという。あらためてインプロヴィゼーションというものが、どのようなジャンルにもスタイルにも帰属しない自由をめざすものであることが理解できる。…

    POPEYE 2014年3月号紹介
    『あまちゃん』の音楽を担当した大友良英も尊敬するギタリストの魅力に迫った研究書。




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